世界はひろいな 15 <アイリッシュ・ダンスを観にいった>

ずっと観にいきたいと思っていた、アイリッシュ・ダンスが2年ぶりの来日公演中です。
今年こそはと思って、楽しみにしていました。


「トリニティ・アイリッシュ・ダンス」のサイトにその起源の説明があります。

アイリッシュ・ダンスの歴史は、イングランドによるアイルランド支配の歴史と非常に密接な関係があります。16世紀にその支配が始まると、アイルランドの伝統的文化活動が一切禁じられるようになりました。厳しい統制は約400年も続きましたが、皮肉にもこうした逆噴の中でアイリッシュ・ダンスの原型が生まれ、発展することになります。
民族楽器の演奏が禁止されてから、伝統的なアイルランド音楽の旋律は家の中でひそかに歌い継がれ、またそのリズムは暖炉の火が静かに燃えるその前で、足を踏みならすことによって親から子へとこっそりと伝えられるようになりました。
最初はひとつのステップに対して2つのステップで応えるシンプルな踊りから始まりましたが、年を経て、複雑なリズムパターンを伴う芸術へと進化します。
長い支配に苦しむ中アイルランドの人々は強い民族的精神を内に秘めながら、静かに大地を踏みならし続けてきました。

トリニダード・ドバコのスティールパンの歴史と重なります。

19世紀 イギリスが太鼓を禁止 暴動を怖れたやつらは心臓を止めたんだ
新たな抵抗 タンブー・バンブー
20世紀 タンブー・バンブーも道路を傷つけるという理由で禁止
従わない黒人は殴られ、牢獄に入れられた
抵抗を続けた
音楽をやめられなかった
NHK 「世界一ドラム缶を叩く人々」より

「道路に転がっている鉄くずを楽器に」して抵抗したトリニダード・ドバコの人たちと同じように、アイルランドでは上半身を動かさない独特の踊りを生み出します。

16世紀にイギリスでゲール語を禁止され、踊ることを禁止されて、窓を通じて外から見られた時に上半身を動かさず、下半身でリズムを刻むダンスが誕生した。
wikpedia「アイリッシュ・ダンス」より

今回の「トリニティ・アイリッシュ・ダンス」は2004年から来日公演をしていますが、それ以前に1990年代にはリバーダンスが何度も来日公演を行っていたようです。
残念ながらその頃はまだアイリッシュ・ダンスを知らずにいました。


youtubeでリバーダンスが数多く配信されています。
代表的なのはこの映像でしょうか。


上半身をほとんど動かさずにタップダンスだけで、これだけの表現ができるのは圧巻です。


wikipediaの「リバーダンス」では、このように説明が書かれています。

アイリッシュ・ダンスやアイルランド音楽を中心とした舞台作品のことである。アイリッシュ・ダンスの中でも特に体幹や腕を使わずに足の動きだけで踊るアイリッシュ・ステップダンスと呼ばれる舞踏を元にしている。
アイルランドに伝わる神秘や伝承、ジャガイモ飢饉等によりアメリカへの移住を余儀なくされたアイリッシュアメリカンの歴史および多様な民族との交流をモチーフにしている。

今回の公演でも楽器はギターとドラム、そしてバグパイプだけですが、タップの音と体を叩くことで音を出すボデイーパーカッションで、なんとも複雑な音の世界も広がっていました。


youtubeの映像だけでも圧巻ですが、タップの音が軽快に聞こえています。
ところが実際の舞台からは、まるで大地の深いとこから聞こえるかのように鳴り響くタップに包まれます。


東京公演は今日までですが、その後は名古屋、札幌、三原、福岡で公演があります。
そのどれも行けない方のために、2012年の映像をどうぞ。
「トリニティ・アイリッシュ・ダンス公演2012」



この2012年、4回目の来日公演については、パンフレットの「トリニティ・アイリッシュ・ダンスの魅力に迫る」にこんなことが書かれていました。

順風満帆だけではありませんでした。2009年のリーマン・ショックではアメリカ経済が大打撃をうけ、トリニティも生徒数が大幅に減るなど影響を受けました。間もなく日本では東日本大震災が起こり、原発事故の影響で海外アーティストが来日を見合わせ、先行きの不透明感から日本のショー・ビジネス業界全体に暗い雰囲気が漂いました。翌2012年のツアーの準備を計画するにあたって、こうした華やかな日本ツアーを行うべきかどうか、果たして公演そのものが組めるのか、そしてそもそもメンバーが来日してくれるのかどうか・・・余震が続き、放射線濃度の発表がある度に緊張感を持って報道を見守っていました。世の中が少しずつ落ち着きを取り戻し復興ムードが高まってくると、コンサート開催の機運も徐々に高まり、最終的にはハワードからの「何があっても日本には行く」という心強いメッセージがあってツアーを敢行することとなったのです。

ハワードは、トリニティ・アイリッシュ・ダンス芸術監督のマーク・ハワード氏です。


来日が実現しただけでなく、福島に行った様子が書かれています。少し長くなりますが紹介します。

ほどなく、東京・横浜・静岡・名古屋・福岡・札幌などで全国12回の公演が実現。加えて、福島県本宮市でのチャリティー公演の話をいただきました。ここは原発事故により浪江町から避難してきた人々の住む仮設住宅が多く設けられていますが、中心地から離れた仮設住宅に住む方々は外に出る機会も減り、仕事もなかなか見つからず籠りがちになっているとのことでした。ハワードに伝えると、「シカゴではお年寄りや障碍者の方々を対象として、手脚の可動できる範囲で楽しめるダンスを教えるワークショップを行っている。狭い仮設住宅の中でもいつでも踊れるので、それを行ってみてはどうか」との返事。アイリッシュ・ダンスは、もともと小さなパブで場所を取らずにステップを踏んで踊ることができて広まった経緯もあるし、運動不足解消にはもってこいとのことでした。

こうして、この年の全国ツアーの序盤に本宮市でのワークショップと公演が実現することとなり、ワークショップではステップダンスや、手と手を取り合って踊るケイリーダンスのレッスンを行い、終始笑顔が絶えない温かな時間が流れました。

アイルランド移民が新天地で差別を受けながらショー・ビジネスに活路を見いだした歴史を振り返り、その挫折と挑戦、そして成功の過程に思いを馳せてみると、辛く厳しい経験を重ねたからこそ人に対して優しく、観客に深い愛情を注ぎ、それによって最大限に喜んでもらうことを生きがいとしていることが、脈々と伝わってくるのです。

どうぞ、皆様もアイリッシュ・ダンスの世界へ。





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