新生児のあれこれ 46 <赤ちゃんの寝かせ方>

「赤ちゃん」と一口に言っても出生直後から1歳前後までその幅は広いのですが、今回の話題はおもに2〜3ヶ月までの赤ちゃんの寝かせ方についてです。


私の手元にある周産期関係の本や自治体の母親学級のテキストなどに目を通してみましたが、「新生児をどのような場所にどのように寝かせるか」について書かれたものは2カ所しか見つかりませんでした。


<どのような寝かせ方が「正しい」のか>



一つ目は二十数年前の助産師学生時代の教科書ですが、「母子保健ノート2 助産学」(日本看護協会出版会、1987年)の「正常新生児のケア」では「体位」として以下のように書かれています。

室温は25℃、湿度60%に保持し、出生直後は頭蓋内出血の疑いがない場合は、頭部を30°位に傾斜し、低くする。頭を横に向け仰臥位にして、十分観察できる場所(観察室)にベッドを置く。体位は3〜4時間毎に左右交互に換え、下方になっていた部分の浮腫に注意する。

「低くし」は「高くし」の誤植のように思いますが、この少し頭を高くする事以外は、現在読むと「えっ?こんな考え方を教わったのか」と驚きます。3〜4時間毎に新生児を体位変換するなんて施設は、私は経験したことがありません。


その他、「助産師業務要覧」(日本看護協会)の新生児のケアを見ても、どのように寝かせるかについて書かれた部分はなく、病院などであれば新生児用のコット内のベッドにバスタオルを敷いて、頭が当たる部分にはタオルを敷くという方法が一般的で、「自明」と見過ごされているのかもしれません。


リスクマネージメントという視点の寝かせ方>


1980年代後半に入ると、日本でもうつぶせ寝が流行しました。新生児でも泣かずによく眠ってくれることやうつぶせ寝で育てると「欧米人」のような形のよい顔や頭になるということで広がりましたが、じきに乳幼児突然死症候群との関連から警告が出されました。


「ベッドサイドの新生児の診かた 改訂2版」(河野寿夫氏、南山堂、2009年)では新生児の入院中の「riskマネージメント」として「寝かせ方(うつぶせ寝)と無呼吸モニター」(p.158)の中で、2000年に米国小児科学会が出した勧告について触れています。

2000年に米国小児科学会はうつぶせ寝を避けるだけでなく、ベッドは硬い素材とすること、児とマットの間には薄いシーツ以外のものを入れないこと、顔を覆う可能性があるものを児のそばに置かないこと、添い寝をしないこと、暖めすぎないことを勧告した。同時に後頭部の扁平を防ぎ、頚部や肩の筋肉を使わせるために、覚醒が確認できるときに限って時々腹臥位にすることを勧めている。

「添い寝はしない」というのは、禁止という意味ではなく添い寝をする人が熟睡するような時はやめた方がよいという意味合いと受け止めています。


いずれにしても、特にまだ自分で寝返りを自由にできるようになるまでの赤ちゃんというのは、体が沈み込まない適度な硬さのマットにシーツを敷いたものの上に寝かせることが基本、というのが現在の考え方ではないかと思います。


そういえば、2〜3年前だったでしょうか。紙おむつかなにかのCMで、まだ2〜3ヶ月ぐらいの赤ちゃんのお布団に枕が使われていたものがあり、そういう認識が広まると危険ではないかと感じたことがありました。


新生児訪問をしていた頃には、ほとんどの方が少し硬めの布団に頭の部分だけタオルを置いて寝かせていましたが、やはり何人かはドーナッツ枕や向き癖防止クッションを使われていてやんわりとやめた方がよいことを説明した記憶があります。


新生児訪問で実際に退院後の生活を見させてもらう経験は、自明と思っているようなことでもその根拠は何かを説明できるのが「専門家」であると痛感したのでした。





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