産後のトラブルを考える 16 <あおばさんの話を聞いてください>

第一子出産を機に排泄トラブルを抱えたために、その日常生活への心身のご負担とともに次の妊娠・出産方法の選択についての苦悩をコメントで知らせてくださったあおばさんの経過をご紹介したいと思います。


まず、こちらのコメント欄に書いてくださった、出産時の経過です。


分娩時、入院中、退院後のそれぞれの時期がわかりやすいように、私のほうで文章を分けさせていただきました。

34歳で一人目を出産。自然分娩とカンガルーケア、母乳育児を推奨する個人病院でした。予定日超過4日目、微弱陣痛があり促進剤。陣痛から4時間で出産。
赤ちゃんの心拍が落ちて吸引とお腹に助産師が乗っかって、会陰切開はしたのにそちらではないほうは直腸まで避け、会陰裂傷4度でした。取り上げたのは助産師2名で、その後当直?別の病院の医者が到着して裂傷部を縫い(麻酔が効かず叫ぶ痛さ)、その後病院の医者も来て「穴があいていますね。やり直した方がいいですね。」などの確認をされ、全身麻酔で縫い直しの手術をしました。産後の授乳は3日目。それまでは何の説明もないままで授乳はあまりせず(赤ちゃんに糖水もミルクも与えられなかったと分かったのは3日目で)出産時から300g、9%体重が落ちてしまいました。5日目朝に退院。肛門の傷が開かぬように、処方された便を柔らかくする薬(アローゼン)1ヶ月と痛み止め1週間を処方されて、隣県実家へ里帰りしました。

入院中からも退院後も数時間おきに下痢が続き、母乳の為には食べる、食べても飲んでもすぐにトイレへ直行。痛みで動くのも大変な中、呻きながら下痢と授乳に明け暮れました。出産した病院に電話相談して、体重の増えが○○を切るまではあげないよう指導されて頻回授乳(1日平均17回)でカバーしました。そのうち傷口が膿み始め、地元の医大を受診すると、何故こんな難産で5日で退院してしまったのかと聞かれました。でも私は医者が見て退院とすれば、それに異を唱える知識もそういう考えすらなかった訳で、そんなに酷いことになっていたのかとショックでした。そして別の酸化マグネシウムの薬に変えてもらい、頻繁な下痢から通常の軟便に変化して、腹痛も減り、不甲斐なさで泣いて過ごした産後からは、だいぶ良くなりました。
しかし、今度は、肛門の回復の遅さに不安が増大していきました。ガスや液漏れ、痛み、薬への依存。いつまでこれは続くのか。1ヶ月検診で東京に戻り、医師の診察では「大丈夫ですよ。しっかり着いています。」担当の助産師は私の退院1週間後に退職されたとのことで、どういう状態で裂けてしまったかは分からず。
医者からは「原因は特定できない。あなたの膣が肛門よりにあるのは確かだけれど、それが原因とは言えない。帝王切開になるぎりぎりの状態で、子供の命がまず優先だったんですよ。」と、原因特定しようとした私が、まるで子供の命より、会陰保護を優先して欲しかったと言ってしまったような、これ以上聞けないという空気を感じて、それ以来は産婦人科に相談するのは、タブーな気になりました。

数ヶ月後も、ガス漏れ、液漏れ、薬依存が続き、意を決して肛門科へ受診しました。
検査の結果、最も心配していた直腸膣瘻はなくてよかったものの、肛門機能は通常の6割しかありませんでした。産後すぐならまだしも、もうくっついているので再度手術をする状態でもなく、リハビリをしていくしかない、とのことでした。
それ以来、3年近く肛門をしめる体操をしても、今日もまだ、ガスと便の違いがわからない、意図せずガス漏れがある、常に下着が汚れる、お腹を壊すと高い確率で便漏れする、などの状態で育児と仕事をしています。

このコメントをいただいた時に、お二人目の妊娠が分かった直後で分娩方法に対する不安を続けて書かれていました。
お辛い事に、流産という結果になってしまいましたが、第二子の分娩方法選択について受診先の病院での経過をその後、送ってくださいました。それに関してはまた後日紹介したいと思います。


分娩時の状況や判断については、分娩に立ち会った医師や助産師・看護師でしかわからない状況があるので、第三者が「ああすれば良かったのに」というのは無責任な後だしジャンケン(後知恵バイアス)になってしまうので控えたいと思います。
あおばさんの分娩のように胎児心拍が落ちて赤ちゃんが苦しいというサインがあれば、吸引分娩とお腹を押して娩出の補助をする方法(クリステレル圧出法)は通常の方法という認識が私にはあります。(クリステレル圧出法に関しては、最近、慎重に行うようにという方向性がだされましたが)



あおばさんの経過を教えていただいて、助産師(あるいは産科に勤務している看護師)として考える必要があるポイントは以下の点かと思います。
1. 4度裂傷の場合の入院中の産後ケア、退院後のフォロー
2. 4度裂傷の母親に対して何を優先するかの判断(母体の回復・精神的な安定>母乳育児)
3. 吸引分娩・クリステレル圧出法の際の会陰保護と、その後の観察
4. 出産時の対応が恒久的な障害のきっかけになった可能性がある場合の、ご本人への対応


そのあたりを少しずつ書いてみようと思います。


あおばさん、記事にすることをご了承いただいて本当にありがとうございます。
もし私の理解が事実と違う書き方や見方になっている部分があれば、遠慮なくお知らせください。





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