産後ケアとは何か 27 <激しく泣く赤ちゃんを育てるお母さんへのケア>

出産して2か月になる豆腐メンタルさんから、9月21日10月17日にコメントをいただきました。
豆腐メンタルさん、ありがとうございます。
そしてご本人の了承なしに本文で紹介することをお許しくださいますように。


豆腐メンタルさんのご相談は次のような赤ちゃんの状態についてでした。

赤ちゃんに乳首をくわえさせようとする度に、震えるように泣き叫び、あまりにも可哀想なので5分も持たずにミルクにしてしまいます。

あまりの泣き叫び声に、私が泣き、減らしたミルクを飲み終わって哺乳瓶を離す度に、切ないほどの呻き声と涙を流します。

最初に読んだ時点で、今まで関わった数人のお母さんと、その赤ちゃんの「震えるような泣き叫び声」が蘇ってきました。


私の答えは決まっていました。
「もう十分頑張ったから、ミルクにしましょう」


でも初対面の方にすぐに「ミルクにしましょう」というのは、アドバイスとしてはその後のお母さんの気持ちのやり場をなくすリスクを伴いますから、「なかなかおっぱいに吸い付かない赤ちゃん」に対応する時のテクニックのような内容も返事として書きました。
コメントをくださった記事には、他にも同じようなお母さんの悩みが書き込まれていて、中にはその方法でうまくいくこともあるからです。


でも、時に何をしても叫ぶように泣く新生児や乳児がいます。
しかも新生児にとって生きる糧であるはずのおっぱいにさえ吸い付かないほどの激しさをもって。


豆腐メンタルさんの最初のコメントを読んで、そういう赤ちゃんもいるのでもうお母さんは十分ですよと思ったのでした。
そして豆腐メンタルさんこそが、ケアされるべき対象なのだと。


<責め立てられるような泣き方に追いつめられる>


コメントの中にいくつも豆腐メンタルさんの悲鳴が表現されています。

育児にストレスや負担が掛かるのって良くないことなの?何よりも自分が望んだ子供なのに全く可愛いという感情が沸かず、母性が皆無なんじゃないかと落ち込み、このまま一生続くような気がして鬱々としています。(9月21日)

ここまで嫌がられ、泣き叫ぶと母親として必要とされていないように感じて鬱々としてしまいます。(10月7日)

授乳が辛い、泣き声に頭が痛くなる、抱っこしていると放り投げたくなる、こんな自分が嫌でたまりません。(10月7日)

ところで、生まれて2〜3日ごろまでも新生児は「震えるように」泣き叫ぶ日があることをこちらこちらに書きました。


母乳便に変化する数時間前の赤ちゃんはかなり激しく泣きます。


ずっと泣き続けているわけではなく、激しい腸蠕動が起きる前の2〜3分でピタッと泣き止むのですが、それをあやして待つ間は果てしなく長く感じます。


ええ、日頃から新生児の泣き方に慣れている私でも、夜中に預かってこの激しい泣き方を何度も聞くと頭も痛くなりそうですし、正直なところ尋常な精神状態ではなくなるのではないかと不安がよくわかります。
「こういう時に、我が子を投げたり殺してしまうのだろうな」と。


その気持ちをぐっとこらえられるか、一線を超えてしまうかはほんのわずかの差ではないかと。


<答えはなにか>



激しく泣く理由もその対応方法も、ひとりひとりの赤ちゃんによっても違うでしょうし、また新生児から乳児の月齢によっても変化するので試行錯誤しかないのかもしれません。


でも、まず激しく泣かせないですむ方法があるのならそれを選択するのがよいのではないかと思います。
生後2〜3日までの新生児の激しい泣き方は哺乳瓶も受け付けないことがほとんどですが、そこを超えるとまた赤ちゃんも変化します。
赤ちゃんも哺乳瓶で落ちつくのであれば、それを選択すればよいと思います。


もう少し月齢があがると、哺乳瓶でも泣き止まない赤ちゃんもいるのでしょう。
思わず揺さぶってあやしたくなることへの警鐘が、小児科学会から出されています。
「赤ちゃんを揺さぶらないで」


お母さんあるいはお父さんの努力が足りなくて激しく泣いているのではなく、そういう赤ちゃんやそういう時期があるのだということが答えなのかもしれません。




<ケアを必要とする側がケアも担う場合の社会支援>


私自身、こうした2〜3ヶ月頃まで激しい泣き方でお母さんが追いつめられた状況は冒頭で書いたように数人が思い浮かぶぐらいです。
おそらく「周囲にはそんな赤ちゃんはいない」頻度なのかもしれません。


だから「なにかやり方が悪いのでは」と、お母さんへのテクニカルなアドバイスや努力を求めてしまいやすいのではないかと思います。
たとえば、豆腐メンタルさんのコメントも以下のような部分があります。

助産師さんからは、出るはずだからミルクを減らすように言われたのですが、あまりの泣き叫び声に私が泣き、(9月21日)

旦那からはおムツやミルクのお金がすごい掛かると言われ、助産師さんからは母乳には根気がいるからシンドイのは仕方がないと伝えられました。(9月21日)

豆腐メンタルさんのお気持ちもミルクにすることへとむいていらっしゃるようなのですが、それを後押ししてくれる周囲の人の言葉が足りないようです。

完ミにしたいと呟いたところ、出るのならあげて欲しいと言われています。私もできることならあげたいのですが、泣き叫ぶと思うと嫌になります。(10月7日)

その葛藤は、お母さんの自己評価を下げてさらに落ち込ませていくことになります。

私が根性なしで面倒くさがり屋な性格が災いしたのは百も承知なのですが、育てなければならない責任はあります。(9月21日)

豆腐メンタルさんのリアルな性格は存じ上げませんが、少なくともこの2ヶ月の状況を見ると通常の何倍、何十倍もの努力と葛藤を乗り越えられたと私には思えるのです。



激しく泣く赤ちゃんが我が家にやってきた場合、その多くはテクニカルなアドバイスよりも、お母さんを抱っこや授乳から少しの時間だけでも解放させる、そんな社会的な支援が有効なのではないかと思います。




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