接遇のあれこれ 1 <技術に集中するだけではない仕事>

美容室を選ぶポイント で「ずっとしゃべり続ける」美容師さんは避けたいと書きましたが、これはあくまでも私の好みの問題で、反対に「美容師さんとずっとおしゃべりしていたい」「美容室でのおしゃべりが楽しみ」な人もいるのではないかと思います。


時には私の方からおしゃべりがはずむこともあります。
先日、初めて入った美容室でも、「美容室の数は信号機と同じぐらいある」という美容師さんの一言から、美容業界のあれこれに話がはずんでしまいました。


もともと世間話のようなおしゃべりが苦手というのもありますが、カットされているときはボーッとしていたい、普段買わない雑誌をボーッとながめていたいということもあります。
雑誌の1枚の写真からあれこれ回想の世界に集中していることもあり、会話でそれが途切れてしまうことにがっかりすることもあります。
また、ドライヤーの音や音楽などでざわめいている店内での会話は声が大きくなったり、テンションが高くなることに疲れる、というところもあります。


出会ったほとんどの美容師さんが、こちらの意図を察してくださるのか、雑誌に見入っている時には話しかけないでくれています。


もちろんそうした自分が客側になった「こうして欲しい」という思いもあるのですが、仕事をしている時の自分と重ね合わせて「美容師さんも仕事に集中できる環境はなにか」と気になるところもあるからです。


おしゃべりしながらカットするって、大変そうだと思うので。


たいした髪型でもないけれど、やはり集中してその技術と経験を発揮して仕事を全うしたら美容師さんも充実感があるのではないかと、自分の仕事に重ね合わせています。


<「技術に集中する+会話」の仕事>


おそらく私がお店に入った瞬間から、美容師さんたちは私の服装や髪型から今日は何を求めているか観察が始まっているのだと思います。


初めての客であれば、少しずつ会話をする中で「この人はどんな性格で、どう対応したらよいか」あるいは髪質や生え方の癖まで観察しながら、過去の自身の経験の中から対応方法を見いだそうとされていることでしょう。


その時点であまりしゃべらず、どうして欲しいかということを明確に伝えられなければ美容師さんも困惑すると思うのでおおよその感じは伝えます。
また、私自身はあまりできあがりにはこだわらないこと、さっぱりと切ってくれればそれでよいことを強調して、あとはおまかせです。


カットされている間、私はほとんど鏡を見ずに雑誌に集中しています。


おそらく美容師さんは、5mmカットするにも「これでお客さんは満足するだろうか」「自分はこうカットした方がこの人には似合いそう」など、自分の仕事のできばえがどう評価されるのかそうとう気になるのではないかと思います。


途中であまり反応がないのも美容師さんにはやりずらいのではないかと、あたりさわりのない話を少しして、「この調子でいいですよ」と暗に伝えています。


そして仕上がりを鏡で確認するあの瞬間が、美容師さんにとっては自分の技術に対する評価なのだろうと思います。
ほとんどの場合、十分によい仕事をしてくださったと感謝できる技術です。


そして1ヶ月ぐらい、髪が徐々に伸び始めてもあまりデザインがくずれないカットだったりすると、同じようにカットしていてもすごい技術もあるのだと感動してしまいます。


やはり美容師さんには、カットに集中してもらえれば十分だと思っています。


でも気の利いた会話も求められる仕事でもあるのかもしれません。




「接遇のあれこれ」の記事はこちら。

2. 高度な専門技術に会話のスキルも求められる
3. 「接遇」という言葉が聞かれ始めた時代
4. 「クレームを招きやすい」状況
5. 「サービス・接遇」が医療に取り込まれた時代
6. 日常生活へ切り込む
7. やんわりと注意する