接遇のあれこれ 4 <「クレームを招きやすい」状況>

wikipedia接遇の説明に「クレームを招きやすい事例」として、「『です・ます』体が使えない」「注意するときの言葉遣い」「無作法」の3点があげれられています。


たしかに医療現場でもこちら側の言動が相手の感情を刺激してしまい、相手の振り上げた拳をおろせさせなくなってしまうことがきっかけで、スタッフと患者さんとのトラブルやひいては医療訴訟へもつながりかねない状況へ陥る可能性があります。


<「です・ます」体が使えない」>


私が最初に看護師として働き始めた病院は、職域病院といってある組織の職員とその家族が対象になる病院でした。
通常の病院とは少し雰囲気が異なり、その組織の中での立場をそのまま患者さんは持ち込んできますから、常に誰に対しても敬語であることは最低限、職員に求められました。


しばらくして他の市中病院に移った時に、高齢者の方々に対しても子供のように話しかける人が多くて、言葉遣いの違いにとまどいました。


親しさの表現というよりも、馴れ馴れしさと相手を見下しているようとられるのではと感じるスタッフもいました。

客が敬語を話しているのに、従業員が「・・・だよ」「・・・じゃないの」などという話し方をする場合である。特に客と親しいわけでもない限り、適切な敬語を用いなければクレームの原因になる。(wikipedia「接遇」より)

では、相手が子供の場合ではどうでしょう。
以前勤務した小児病棟でも、また出産に上の子たちが立ち会う場合でも、おおむね小学生以上であれば敬語というか丁寧語で話しかけています。


どの年齢でも、対等に、「一人前として対応してもらっている」気持ちになれるほうが人間関係はスムーズにいくように私は感じます。


<「注意する時の言葉遣い」>


医療というのは、外来での手続きから治療に関する事まで、それまでの日常生活とはことごとく異なる体験に満ちて、それに適応していかなければならない環境かもしれません。
通常の生活ならいい大人が注意されることはめったにないのに、「こうしてください」「これをしてはダメです」など行動を変えさせられたり制止されることにあふれています。


医療スタッフ側にすれば「注意」ではなく「説明」したつもりであったのに、相手にとっては言われた事自体が不快になって反応しやすいのかもしれません。

注意していることは正当な行為なのであるが、客側が不快感を抱き、「その言葉遣いはなんだ!」と論点をすり替えて口論になり、トラブルが大きくなる場合がある。

そう、この「論点がすり替わってしまう」ことが大事なポイントかもしれません。


<医療は「養育者→子ども」の関係になりやすい>


こちらの記事で、交流分析について少し書きました。我流の解釈なので適当に読み流していただければと思います。


医療従事者と患者さん、あるいは患者さんの家族との関係が「I'm OK. You are also OK.」になっているかどうかを意識できることが、接遇の形式上の対応策よりももしかしたら大事ではないかと私には思えるのです。


「I'm OK. You are also OK」
これは大人(adult)と大人(adult)の関係になります。
言い替えれば、相手の立場も認め対等になろうとする関係でしょうか。


それに対して、医療では患者さんや家族との関係がどうしても「I'm OK, but you are not OK」になりやすい場面が多いと思います。
「こちら側は医学的に正しいことを話している。あなたが良くならないのはそれを守らないから」「入院生活は他の患者さんもいるから、あなただけ勝手なことは許されない」というように。


それは養育者(parents)と子ども(child)の関係であり、相手の方が悪い、相手を変えなければという負のストロークが強い場面に往々にしてなりやすいのかもしれません。


少しだけ言い方を変えるだけでもトラブルは回避できるだけでなく、本当にその患者さんが悩んでいた別の問題点が見えてくる事もありますね。




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