「空き家」をどうするか

先日、NHKスペシャル「シリーズ日本新生」で空き家についての番組を録画していたものをみました。


「"空き家列島"の衝撃」というタイトルに心ざわつかせてみている人もけっこういるのだろうなと思いました。
7〜8軒に1軒は空き家、それが親の家だという人も多いのだろうと。
私もそのうちの一人として切実な思いで観ました。


番組で紹介されていた「空き家を壊せば固定資産税は6倍になる」、つまり空き家があれば税金が6分の1で済むからそのままにせざるを得ないという事情があることを初めて知りました。
私の親の家は借地なので税金の問題は関係ないのですが、親の生活の場が施設に移り、二度とあの家で暮らすことはないとわかっていても壊せずにいます。


「親の気持ち」の問題があるためです。


父親は認知症になってからは自宅への思いはあまりない様子ですが、母は揺れています。
私たち子ども側は、親が建てたその家に住んだのはわずか2年ほどなので全くと言ってよいほど未練はありません。
母は台風や大雪での被害や不審火などの防災への不安はあっても、なかなか処分する気持ちにはなれないようです。
一度は「処分しようか」と思い始めたようですが、2ヶ月もすると気持ちが振り出しに戻っていました。


処分して更地に戻すだけでも、おそらく300万円ぐらいはかかります。
親と私たちの貯金は介護費用でどんどんと目減りしていますから、家を処分する費用を誰が出し、いつ解体するかといった現実的な問題に心を痛めているのは子ども側です。
「誰かが借りてくれないかしら」と非現実的なところに気持ちを逃避させたり、両親がその家を最終的にどうするのか全く計画もしていなかったことに愕然としたのでした。


番組でも、空き家がタヌキやハクビシンのすみかになっていたり、ホームレスの方が住み着いたり台風で瓦が飛んだり、不審火で隣家に被害がでている話しがありました。
親の家がある地域は雨が多く湿度が高いので、おそらくカビもすごいことになっているのではないかと思いますし、家というのは手入れがされないと朽ちていきやすいものです。
また空き家になったままの家があることで、その地域の景観にも影響を与えていることも気になっています。


子ども側としてはできるだけはやく処分したいと思うのですが、親にとって「住み慣れた場所」「人生の大半を過ごした家」への気持ちの整理の時間が必要だろうと思い、切り出せずにいます。


冒頭の番組では、主にインフラを縮小せざるをえず、街をコンパクト化して行く必要があるというあたりに結論を持って行きたいようでした。
たしかに将来の日本の住宅や街をどうするかという設計図も大事ですが、「数十年後にその家を誰がどうするのか」まで考えてず家を建てて来た人が多いのではないかというあたりも問題のひとつではないかと感じます。


自分で建てた家をどうするか。
案外、考えていない人が多いから、30〜40年前に建てた郊外の一戸建てがどんどんと空き家になって朽ちているように私には見えるのですが。