目から鱗 7 <キュウリの切り方>

水温む季節になると、気温はそれほど上がっていないのに突然、生野菜を食べたくなります。
それまでの白菜や小松菜の季節に、贅沢ながら少し飽きてしまったかのように。


その中でも特に、柔らかい春キャベツとキュウリを食べたくなります。


キュウリは一年を通して好きな野菜の一つですが、やはり真冬には触るのも冷たいのであまり買う事はありません。
店頭に並ぶキュウリに手が伸びると、春がやってきたという感じです。


そのキュウリですが、切り方ひとつでこんなに食べたいと思わせるものなのかと驚きました。


<斜めに切って千切りにする>


子どもの頃のキュウリの食べ方と言えば糠みそ漬けで、斜め1cmに切ったものが普通でした。
今ほど生野菜のサラダは食べなかった時代でしたから、あとはお味噌をつけておやつ代わりに丸ごとかじっていました。


1970年代初め頃でしょうか。ステイック状に切ってマヨネーズなどにつける食べ方が、おしゃれな感じで広がった記憶があります。


だんだんとキュウリの薄切りが生野菜サラダの定番になり、インスタントラーメンの普及とともに自宅で冷やし中華を食べる事が増えて、キュウリの千切りを食べるようになりました。


キュウリを5cmぐらいの長さに切って、縦に薄切りにして千切りにする。
それがキュウリの千切りでしたし、キュウリを千切りにする方法は他に考えつきませんでした。


1980年代終わり頃だったと記憶しているのですが、実家に帰った時に母がいつもとは違うキュウリの千切りを出してくれました。
キュウリを斜めに薄く切って、それを千切りにしたものです。


テレビの料理番組でやっていたのを見たそうです。


従来の千切りだと全部が白い実の部分だけと緑の皮の部分だけのものになってしまうのですが、この方法だとどの千切りにも緑の部分が入っていて、見た目にもきれいです。


そして何よりも、同じキュウリなのに美味しさが違うことに驚きました。
まあ、これは好き好きの問題なのですが、歯触りの良さが全く違うと思います。


もうひとつ、調理するのも面倒な千切りですが、縦ではなく斜めに切るだけでその手間が半減される感じがあります。


あれ以来、キュウリの千切りはこの方法一辺倒になり、キュウリの消費量が格段に増えたのでした。


切り方一つで、こんなにも違いが出ることに目から鱗でした。
たわいのないキュウリの話に「目から鱗」は大仰過ぎるかもしれませんが、これしか切り方はないという「思い込みから解放される一瞬」でした。




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