朝6時台の通勤電車の静寂が好きと先日書きましたが、決してこの時間帯の通勤が好きでも、この時間帯の電車が人が少ないわけでもありません。
3つの路線を乗り継いで、8時半の申し送りに間に合うように出勤するには、この時間しかないのです。
この生活スタイルになってまず驚いたことは、6時台に通勤・通学する人の多さです。
私は多少時間がかかっても、あえて混雑している車両を避けているのですが、それでも立錐の余地なし、という区間もあります。
早朝から定員乗車率250%の混みようです。
本当はあと10分ぐらい遅く出てもまだ間に合うのですが、10分違うとさらに混むので、この時間帯にしています。
本当に「電車から吐き出される」ようにホームに出て、「これから一日クリニックで走り回って働くエネルギーが残っているだろうか」と心配になるほどの徒労感です。
そして日勤で早い時間に出勤する生活スタイルに慣れるまでには、2〜3ヶ月かかりました。
ここ数日で耳にする「国家公務員における『夏の生活スタイル変革』」のニュースに、私はまず「もうこれ以上通勤電車にはスペースがないからね。乗せてあげないからね」とまるで蜘蛛の糸を掴もうとしている人を払い落としたカンダダの気持ちになったのでした。
我ながら「心配するところはそこか」と自分の腹黒さと大人げなさにあきれたのですが、それほど都内の早朝の電車は満員のところがあるのです。
<浮かんでは消えるサマータイム導入>
国家公務員の方がどれくらいこの通勤時間帯に変更されるかわからないのですが、まあ、各車両に数人ぐらい国家公務員の方が増えても、譲り合って乗ることはできると思います。
けれどもこのニュースは、おそらく、今まで時々浮かんでは消えてきたサマータイム導入をもくろんでいる人たちの動きがあるのではないかと気になりました。
総務庁から3月27日付で「『夏の生活スタイル変革」(朝型勤務)』について」という通達が出されていました。
その中にこう記されています。
「夏の生活スタイル変革」については、本日の閣僚懇談会において、安倍内閣総理大臣から、総務大臣にあっては地方公共団体に、厚生労働大臣にあっては民間企業に、この取り組みが浸透するよう周知に努めていただきたい旨の発言がありました。
欧米のサマータイムのように時間を変えることはあきらめても、夏は2時間ぐらい国民(労働者)に早起きをさせて出勤時間を早くするシステムにしたいという人たちがいるのだと思います。
夏だけ2時間早く起きて出勤を求めるとなると、都心の公共交通機関はラッシュのピークが6時台になるかもしれませんね。
そうなると、私は4時か5時出勤ぐらいにしないと、とても一日働く体力・気力とも保たれません。
今でも、ラッシュピークを避ける為の時差出勤をしている人たちによって、なんとか混雑が緩和されて、あの朝の民族大移動の時間帯を毎日奇跡的にこなしているのだと思います。
<残業しなくてよい職場の人員数というジレンマ>
さて、政府が出した「夏の生活スタイル変革」に、「通常8:30〜9:30の勤務開始時刻を1〜2時間程度早め、7:30〜8:30(終業時刻は16:15〜17:15)等とする」とあります。
(「国家公務員における『夏の生活スタイル変革』(朝型勤務と早期退庁の勧奨)の実施方針」で検索してみてください)
この一文からいろいろと想像していまうのですが、まずは「残業」の考え方です。
部署によっても違いがあると思うのですが、なぜ「残業」という勤務が発生するかと言えば、その日の一日の業務量が時間内に終わらないからです。
たとえば私たち看護職も、その日に予定外の入院や処置が入ればそれ自体は時間内に終えても、付随した書類などの残務整理で1〜2時間ぐらいの残業はしょっちゅうあります。そのほとんどが、「今それをしないといけないから」というものです。翌朝には持ち越せないのです。
たとえば医療機関でスタッフができるだけ残業をしなくて済むとしたら、やはり全職種のスタッフ数を多くしてゆとりのある職場にする以外ないと思います。
ところが、ふだんゆとりがあると「ムダに人が多すぎる」と判断されるジレンマもあります。
特に、公務員の方々はそういう視線での批判にさらされやすい立場です。
サマータイム導入とか「働き方を含めた生活スタイル」を考えるのであれば、ゆったりと仕事をすることを批判されない国民性のようなものが土台になければ無理ではないかと思います。
<残業代は削減できても早出代は出ない>
「日が長い季節を有効活用し、早く出勤して余暇を楽しもう」というのは聞こえは良いのですが、早く出勤することに対する労働報酬が無視されています。
たとえば、通常であれば6時7時に出勤すれば「早出代」が加算される職種もあると思います。
それは普通の生活時間以外の出勤と労働に対する報酬です。
「サマータイム」にすれば、雇用側は早出代を出す必要はないことでしょう。
サマータイムにしかたらといって、人が増えなければ残業は減りません。
朝早く出勤した分、ふだんよりもさらに長い労働可能な時間ができてしまいますが、雇用者側は通常の残業代だけの負担で済むことでしょう。
あるいは「早く帰宅させるための就業時間」を決めれば、それ以降は残業代を払う必要がなくなるかもしれません。
新たな政策を打ち出す時には、羊頭狗肉ではなく、メリット・デメリットを国民に明確に説明して欲しいものです。
何となく良いことばかり伝えようとするから、きっと何かをもくろんでいる人たちがいるに違いないという疑心暗鬼も生みますからね。
夏は早く目が覚めたら、ゆっくり自宅で過ごせる社会のほうが私は幸せだと思います。
夏だからと出勤時間を早めてもいい事は何もなさそうです。
まあ、そこは気持ちの問題ですけれど。
夏の出勤時間を変えるのであれば、交通機関が激混みにならない対応もよろしくお願いします。