水のあれこれ 12 <水を打つ>

昨日の男子100m平泳ぎ決勝は、会場も一体になった試合でした。


スタートの合図が鳴るまでの数秒間、まさに今日のタイトルのようでした。
誰もが固唾を飲み込んで、北島康介選手と他の選手がどのような泳ぎを見せるかという期待感が感じられました。


一昨日の準決勝で見せた伸びのある大きな泳ぎは、世界記録を更新していた時期と似ているように感じました。
「あーーー。この泳ぎを見たくて、辰巳に通った10年でもあるのだ」と。


北島選手のファンと認めるのは何だか気恥ずかしかったのですが、存在の大きさはいつも会場の雰囲気を変えるぐらいすごいものです。


この夏の世界水泳の代表権は残念ながら得られなかったけれど、観客をも集中させる期待通りの美しい泳ぎとレースでした。


本当にすごい選手だと思います。


大きい息の長い選手といえば、昨日の男子50mバタフライでした。
8人の選手のうち、大学生は2名だけ。あとは、20代後半から30代前半の選手です。
特に河本耕平選手、高安亮選手は、短水路長水路ともにこの50mでは常に上位に入って来た選手です。


スプリンターは20代前半がピークのように思っていましたが、世界の選手をみてもその年齢はどんどんと上がっています。
この50mバタフライも、いつも達人級の泳ぎが見られるなかなかの種目だと思っています。



10年前に比べると、社会人になってからも泳ぎ続けて日本選手権に挑戦される方が増えました。
以前は、伸び盛りの大学生あたりがその勢いで選手権を獲得していたような記憶がありますが、今はそれでは優勝はできないし、世界に挑戦するためにはまず国内のこうした達人級の選手を超えなければいけないので大変だろうと思います。


メダルや記録も期待するところはあるけれど、勝負というよりも、水を打ったように会場を集中させる泳ぎもまた競泳の魅力なのかもしれません。




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