記憶についてのあれこれ 70 <野犬が記憶にあった時代>

先日、NHKの番組で「恐怖!ヤギ襲撃事件」というタイトルを見つけたので録画しておいて観ました。


玄関にベンチがある国では、ヤギや放し飼いのアヒルや鶏が庭にいて動物は身近な存在だったので、気になったのでした。
熊にでも襲撃されたのかと思ったのですが、野犬が増えている話でした。
それは、大変!
野犬の増加がわかるようなタイトルの方がよいかもしれませんね。


<野犬狩り>


1960年代、私が子どもの頃にはまだ「野犬狩り」という言葉を、時々耳にした記憶があります。
幼稚園のころに引っ越した地域では、時々、野原で飼い主のいない犬に遭遇することがありました。


それでもあまり野犬に恐怖を感じるほどの直接の被害はなかったので、私の世代では犬といえばペットや番犬として身近に感じる人の方が多いかもしれません。


東京オリンピックの前に、都内の野犬狩りが行われた」という話を大人から聞くことがありました。
犬に対して残酷なことをと悲しく思ったのは、まだ本当の野犬の怖さを知らなかったと痛感したのは、1980年代に暮らした東南アジアの国ででした。


いたるところに野犬が群れをなして寝そべっているので、彼らを刺激しないようにしてそっと歩くのは緊張しました。


犬を追い払うための長い棒を持って歩く人も多く、「人のパートナーとしての犬」とは全く違う関係がそこにありました。
その国へ赴任する際には狂犬病の知識もありましたが、私にはまだまだ犬への愛情のような気持ちが残っていたので、つい「かわいい!」と犬に近づきそうになるところを何度も現地の友人から止められました。


ヤギなどの家禽類は身近にいましたし、猫も自由に家の中を歩いていましたが、犬を飼っている家はほとんどなく、犬は追い払われる存在でした。


冒頭の番組では野犬が集団でヤギを襲い、首を噛み切って殺しているらしいとのことでした。
Wikipedia野犬にも、「犬はその習性上、群れを作る傾向が強く、集団で狩りを行う。このため一度大集団が出来上がると、人間ですら襲われる危険が高まり、周辺住民への脅威ともなりうる」と書かれています。


番組の中では、愛嬌のあるペットとして人気のある小型犬もその野犬の集団に入っている様子がうつっていました。


<野犬が日本にいた時代の話>


こうして思い返すと、私の生まれた1960年代初頭は、日本から野犬が少なくなっていった時代だったのだと思います。


もう少し前の世代の人には、野犬の怖さの経験があるのではないかと少し検索してみました。
「戦後の野犬たち」がありました。ご自身の終戦直後の野犬の記憶から、図書館で1945年から55年あたりまでの野犬についてのニュース検索をされたことが書かれています。


当時の日本にも、あの国で経験したような眼光鋭い野犬の集団があちこちにいたのでしょうか。


もう少し時代をさかのぼった明治初期に、犬狩りが農民一揆になっていった話がありました。
「壱岐の犬狩り騒動」



鹿児島大学農学部が公開している「狂犬病予防接種は何故必要か」に、狂犬病対策の歴史がまとめられてました。
(直接リンクできなかったので、上記名で検索してみてください)


私が子どもの頃のまだ「犬は動物である」という人間との一線が明確だった時代ではなくなり、最近のように家族の一員のように愛されていていると、一旦人の手を離れると野犬になっていくことは想像しにくいかもしれませんね。






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