帝王切開について考える 32 <小まとめ>

こんさんからいただいたコメントがきっかけで、帝王切開についての記事を書きました。


ここ半世紀あまりの帝王切開についての考え方の変化をあらためて考える機会になりました。


私が助産師になった1980年代終わり頃は、まだエコーの診断技術がようやく積み上げられ始めた頃でしたし、産科に限らず救命救急のあけぼののような時代でしたから、当時の医療のレベルは今昔の感があります。


それでも、帝王切開術後に母親が感染症でなくなることはまず心配しなくてよかったですし、胎児を助けるための帝王切開という視点も当たり前の時代になっていました。


私が生まれた半世紀ほど前は、まだ経済的理由で帝王切開を受けずにいた産婦さんもいたことでしょうし、帝王切開を受けても術後の合併症のリスクが高かったり、それだけのリスクを背負って手術をしても赤ちゃんが1週間ほどで亡くなることも多かった時代であることに、助産師ながら知らないことばかりでした。


そんなことを行きつ戻りつ考えていると、1990年代頃からの「自然なお産」や「母乳だけで育てる」といった風潮が、なんだかとても万能感にあふれた危ういものに感じられてきます。
安全を手に入れたあと、まるでその前の時代の記憶が社会からなくなってしまったような。


昨日の記事のように、戦争を知らない世代にはイメージすることも難しい平和を知らない時代の感覚に似ているのかもしれません。
その時代を知る人にとっては、その時代を後の世代に伝えることの難しさとでもいうのでしょうか。


さて、こんさんのこちらのコメントへの返信で、「帝王切開で生まれた赤ちゃん編」を準備していると書きながら時間が経ってしまいました。


もう少し簡単にかけるかと思ったのですが、案外「帝王切開で生まれた赤ちゃんの特徴」ということ自体がわかっていないことにつまずきました。


帝王切開について考える」はまたぼちぼちと続くと思いますが、「帝王切開で生まれる」ということはどういうことなのか次に考えてみようと思います。


帝王切開について考える」はここまで書きました。

1. こんさんの話を聞いてください
2. 周手術期看護・・・手術を中心にした看護
3. 帝王切開後19時間とはどのような状態か
4. ケアの標準化の難しさ
5. 帝王切開術後の看護、1980年代の教科書より
6. 帝王切開についての専門書がほとんどない
7. 手術療法とは一生の一大事である
8. 手術侵襲からの回復過程・・・ムーアの学説
9. 「周囲への無関心」にさせるほどの侵襲
10. 赤ちゃんとの対面
11. 帝王切開と『母乳育児』という考え方
12. 『帝王切開時の母乳育児支援』より
13. シュールな『帝王切開時の早期皮膚接触』
14. 帝王切開後の「周囲への無関心」の時期
15. 再び、こんさんのコメントより
16. 「母子同室、母子分離の場合の母乳育児支援」より
17. 『母性』という言葉
18. 「帝王切開が育児行動に与える影響」より
19. 「10年やってわからなかった怖さを20年やって知るのがお産」
20. 帝王切開後の合併症
21. 聞かれなくなった「創部の安静」という言葉
22. 術直後に何を優先するか
23. 「手術による変化・喪失の支援」より
24. マズローのニーズ理論と術後の安全なケア
25. 帝王切開の入院期間の移り変わり
26. 「産み方は生き方」?
27. 「お産を家族に返す」?
28. 「我が国における帝王切開分娩の最近の動向」より
29. 助産師が帝王切開で出産すること
30. 戦前から戦後お帝王切開についての文献より
31. 帝王切開の胎児適応