添い寝授乳と添い寝

産後、特に初産婦さんの場合には体を思うように動かせなかったり傷の痛みが強い場合など、赤ちゃんを抱っこしたり授乳の姿勢をとりつづけることもままならないことがあります。


あるいは、入院中は比較的眠っていてくれた赤ちゃんも退院後あたりから急激な体重増加期に入って、別人のように啼いたりぐずり、ずっと抱っこや授乳に明け暮れることがあります。



そのため、お母さん達が赤ちゃんに少し慣れて来て、赤ちゃんもうんちとの闘いが終わって深い吸い方が増えて来た生後3〜4日目あたりに、退院後の授乳に備えて添い寝授乳を説明することもあります。


お母さんも横になって足を伸ばせるし、ずっと抱っこでは腱鞘炎や腰痛を起こしやすいので、知っておくと便利ではないかと。


でも案外、お母さん達は「怖い」という印象が強いようです。
初産婦さんだけでなく、経産婦さんも「一人目の時には怖くて添い寝をしたことはありませでした」という方もけっこういらっしゃいます。


「窒息させるのではないか」という本能的な恐怖なのか、どこかで耳にしているのかはわかりませんが。



さてこの添い寝授乳ですが、初めての方に説明しようと横になったお母さんの脇に赤ちゃんを置こうとすると、いつも皆さん同じような行動をとられます。


腕枕に新生児の頭を載せようとするのです。
それでは赤ちゃんの口がお母さんの乳首をとらえにくく、また赤ちゃんも気道を塞ぎそうな態勢になってしまいやすいのですが、この態勢が「添い寝授乳」のイメージなのでしょう。


もう少し月齢が上がって、赤ちゃんの体格が大きくなり首もすわる頃になれば、腕枕での授乳もしやすくなることでしょう。


新生児の場合には、タオルを折ったものの上に赤ちゃんの頭を載せておっぱいと同じくらいの高さにすることと、ややのけぞるような姿勢で乳首と乳輪が口に入りやすいように、赤ちゃんの背中からおしりのあたりをバスタオルやクッションでお母さんに押し付けるように固定するとよい感じです。


ですから、お母さんの腕は赤ちゃんから離れた状態になります。


そして赤ちゃんが眠りそうになったら、そのまま少しお母さんの体から離して平らな状態にして添い寝してみてくださいねと説明しています。


また、添い寝で授乳をしている時にはお母さんも気持ちよくなって眠ってしまうこともあるので、すごく疲れて眠ってしまいそうな時には添い寝授乳はやめたほうがよいと思うことも説明しています。


それからもうひとつ、お父さんには新生児との添い寝はやめてもらった方がよいかもしれないこともお話しています。
というのも、生まれて間もない赤ちゃんと添い寝をしていたお父さんが赤ちゃんにおおい被さってしまったという悲しい出来ごとを直接聞いたことがあるからです。
もしかすると、男性の眠りというのは深くて赤ちゃんの動きには気づかないのかもしれません。


新生児でも眠りが浅い時間帯や浅い日があります。
ベビーベーッドに寝かすほうが安全かもしれないと思っても、置いたらぐずるを繰り返して周囲を疲弊させるような時が。


不思議と添い寝であれば、時々ちらりちらりと薄めを開けたりしながらも、啼かずにいてくれます。


たぶん、「今は眠ってられないくらい成長している時間だから、そばでちゃんと見守ってね」ということなのかもしれません。



ちなみに帝王切開の方は、傷の痛みの方が強くて添い寝授乳はしにくいようです。



「添い寝授乳」や「添い寝」は危険だから一律禁止という話ではなく、どんな時に、どのようなことに注意しながらしたらよいかを説明できればよいと思うのですが、いまだに添い寝授乳や添い寝についても周産期看護ではヒヤリハットに基づいた方法が明文化されてないのが現状です。