事実とは何か 2 <言葉で表現するのは難しい>

先週の10月28日29日の二日間、辰巳国際プールでFINA競泳ワールドカップ東京大会がありました。


このワールドカップは通常、短水路(25m)なのですが、今年は長水路(50m)に変更されたこと以外は、海外からの参加選手もわからないほど、開催前の情報がほとんどありませんでした。


ところが、あのホッスー選手を初め、アービン選手、そして私が好きだった中村礼子選手が活躍されていた頃から自由形や背泳ぎで常に世界のトップにいたナタリー・コグリン選手、平泳ぎのファンデルバーグ選手、そして8月の世界水泳で活躍した背泳ぎのシーボム選手やラーキン選手、そしてジャマイカのアーキンソン選手など、わくわくするようなメンバーでした。


初日も競技前のアップを見ることを楽しみにして出かけました。


プールサイドにホッスー選手が現れた時には、その雰囲気と筋肉で引き締まった体ですぐにわかりました。
そのあとはずーっとホッスー選手がアップしている様子を追い続けていましたが、あの筋肉で重そうな体がすーっと軽く浮いているようでした。


アップですから軽く泳いでいる、というのではなく軽く泳ぎながらも他の選手よりも速度もあるように見えました。


今まではホッスー選手が来日した大会は短水路だったので、今回は初めて長水路での泳ぎを間近でみることができました。
相変わらずパワフルで、初日には6種目、2日目は4種目だったでしょうか。すべて決勝に出場し、優勝や2位3位で圧倒されました。


ただ、その泳ぎ方はがむしゃらにパワフルではなく、たとえばクロールでも常に背中が水面から出ている感じでうまく水のうねりに乗っている感じです。
あの圧力抵抗と造波抵抗が意識された本当に美しい泳ぎ方だなあとほれぼれしてしまいました。


<抵抗の少ないストリームラインを見いだす>


さて、今日のタイトルが競泳と何の関係があるかというと、そのホッスー選手のアップの様子を見ていた時に、ストリームラインがきれいにまっすぐ伸びているのとともに、常に左右のつま先をぴったりとつけていたことでした。


これは野口智博氏の本でも「抵抗の少ないストリームライン」として、「足首は伸ばしたまま、両足は足の甲と足の裏を少しだけ重ねる」とあります。
たぶん、競泳の教え方としては基本的な点なのだろうと思います。


私が20年ぐらい前から独学で水泳を始めた時に、キックをつかって速く泳ぐことよりはまっすぐできれいな泳ぎ方をしてみたいとなぜか思いつき、「ストリームライン」という言葉も知らないほどの素人でしたがそのストリームラインを意識し始めました。


数年ぐらいたった頃でしょうか。自然とこのつま先あたりを重ねると、よりスムーズに泳げるような気がしたのでした。


それからしばらくして競泳大会の解説を聞く機会が増えて、どの選手のことかは忘れましたが、「あのように足先を重ねるとより抵抗が少なくなる」と解説者が話されていたのを聞いて、私自身が自己流の練習でしたが本質的な部分を見つけていたことに、ちょっと心が震えるようなうれしさを感じたのでした。


ただ、たしかに足首を伸ばしてつま先を重ねるという表現で済むのですが、あの水の抵抗が少なくなる感覚を言葉で表現するのは難しいかもしれない。
そんなことを思いながら、ホッスー選手の泳ぎを見ていたのでした。





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