目から鱗 8 <次世代の乳児用ミルク>

東日本大震災の後、液状乳児用ミルクがあるといいなと思って書いた記事がきっかけで、同じ思いから社会に呼びかけていらっしゃる末永理恵さんが私のブログに書き込んでくださったのがちょうど1年前の今頃でした。


ネット上での署名活動をされていて、そのたくさんの声にこちらも目から鱗だったことを紹介したのがこちらの記事でした。


先日、末永理恵さんが久しぶりに状況を伝えてくださいました。
なんと、乳業会社の方々とのミーティングを持ったとのことです。
その行動力には、本当に尊敬です。


Facebookで議事録を公開してくださり、そこからまたまた目から鱗なことが書かれていました。
ブログからは直接Facebookにはリンクできないので、末永理恵さんのコメントのURLマーク(赤い屋根の家)をクリックしてくだされば、読む事ができます。


<「常温の水で使える調乳キット」>


その議事録では、全体の印象としてはまだまだ日本で調乳済みミルクが実現するには道のりが長いという感じですが、目の前が開けるような箇所がありました。
考えていたら楽しくなるような、そんな開け方です。


その部分はこちらです。

ここからは液体ミルクではない商品の提案になります。


まず、災害時の備えとして、常温の水で使える調乳キットはどうでしょうか。
署名の賛同者のかたからご提案いただいたのですが、1回分の粉ミルクと精製水がセットになり隔壁で分けられた形で、点滴の薬液・生理食塩水のキットのイメージです。場合によっては精製水の部分に発熱剤を付けてお湯にするというようなオプションパーツも視野に入るかもしれません。


賛同者の中に医療従事者がいたのかもしれませんね。
でも、私には思いつきませんでした。


なーるほど、それはすごいアイデアだと思いました。
そしてもう一つの提案としては、そのキットに使い捨て人工乳首をつけていたら、もう完璧だと思います。


<プレミクストバッグ>


この抗生物質のキットについては「樹脂と輸液」の中でも紹介しました。

1996年 抗生剤と生食溶液を二層に分け、ワンプッシュで溶解できる・・・

まだすべての抗生剤がこの形になったわけではありませんが、産科でよく使われるペニシリン製剤がこの形になって本当に準備が楽になりました。


それまでは、まず10ccほどの生理食塩水を吸って粉末の抗生物質が入っているガラスのアンプルに注入し、よく撹拌させてからまた注射器に吸い上げて、その溶液を100mlの生理食塩水のボトルへ詰める必要がありました。


今は、生理食塩水が入っている部分をグッと押すだけで、同じパックの中隔部分が開いて空気に触れることなく抗生物質の粉末部分と撹拌させることができます。


・・・といっても文字だけではわかりにくいですね。
ニプロファーマ株式会社の伊勢工場のサイトに写真がありました。
「注射剤のキット製剤全般を製造」の右端のパックがそれです。


本当に抗生物質の調剤が簡単になったので、目から鱗でした。
あまりの「発想の違い」のためか、最初の頃は「中隔を破らずにそのまま投与」したインシデントレポートが多かったのでしょう。
最近のこうしたキット型の薬剤には、「中隔を開通させたらはがす」というシールが貼られていて、何重にもうっかりミスを予防する対策がとられているようです。


まあ、さすがにこのタイプのミルクができたとしても、中隔を開通させずに水だけを赤ちゃんに飲ませてしまうヒヤリハットはなさそうですね。


<乳児用ミルクの目から鱗


産科施設でも小児科併設だと、時々、1ヶ月近い新生児が入院していることがあります。
生まれて最初の数日ぐらいは、飲む量も20mlとか40mlなので調乳スプーンで1杯とか2杯ですみますが、生後1週間を過ぎるころから「5杯、6杯、7杯・・・」という量にどんどんと増えていきます。


結構、あのスプーンで粉ミルクを準備する方法というのはわからなくなりますよね。
他の業務のことも考えながらとか、夜、こちらも少し眠かったりすると・・・。
1ヶ月の赤ちゃんでも大変なのに、1回量が200ml以上の赤ちゃんとかは家での調乳が大変だろうなと思っていました。


そのうち、1杯40ml用の大きなスプーンも出てきましたが、あの粉ミルク用のスプーンというのはメーカーによっても製品によっても調乳量が異なるのでスプーンも変えなければいけないこともありました。


次にでてきたのが、キューブ状になったミルクでした。
40ml分のミルクが1個の塊になっているので、計量間違いをしなくてすみそうです。
実際には、日常に使うのには従来の粉ミルクの方が微調節できることと、安価であることから病棟でもそれまでの粉ミルクでしたが。


でも「粉末しかない」と思っていたミルクを塊にするという発想に、すごいなあと脱帽したのでした。


次に、目から鱗だと思ったのは、あの大震災の後に初めて調乳済みミルクが海外では一般的であることを知った時でした。


乳児用ミルクというのは粉末あるいは固形という乾燥させた状態である。
液体で販売されていた頃の大変さから、粉末になった乳児用ミルクは本当に魔法のような製品だったことでしょう。その粉ミルクが手に入るようなった当時から粉ミルクの「常識」とは乾燥したものとなりました。


ところが時代は巡って、場合によっては調乳済みミルクの方が安全・安心して使うことができるし、調乳にかかる時間やリスクを減らしてくれるようになりました。


次世代の乳児用ミルクはどんなものが登場することでしょうか。
そう私たちの発想を越えて、本当に赤ちゃんにも安心して飲ませてあげられるようなものが。



目から鱗」まとめはこちら
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「乳児用ミルクのあれこれ」まとめはこちら
合わせて「母乳推進運動と調整乳反対キャンペーン」もどうぞ。