観察する 2 <ペンギンの泳ぎを観察する>

マグロの悠々とした泳ぎを見た後は、人間臭く感じるペンギンです。


ぶつかり合って、もみくちゃになりながら水槽の中を行ったり来たりしている様子は、スクランブル交差点の人間のようです。


葛西水族園の「ペンギンの生態」の水槽では、ペンギンの水中での行動が見られるようにガラス張りの部分があります。
一昨年の今頃も、そこでしばらくペンギンの泳ぎを眺めていました。


あの独特の体型とフリッパーで、水の抵抗を少なくしてスピードを出して泳いでいる姿を直接見る事ができただけで、前回は圧倒されていました。


その水槽では、イワトビペンギンフンボルトペンギン、そして時々オウサマペンギンが泳ぐ姿を見られます。
今回は、イワトビペンギンフンボルトペンギンの泳いでいる姿に違いがあることに気づきました。


イワトビペンギンは水中から浮上する時に思いっきり息を吐き出すのですが、フンボルトペンギンは息を吐き出すしぐさはありません。


もうひとつ、フンボルトペンギンは水中でその羽毛の間から気泡が出ているのに対して、イワトビペンギンの体からは気泡が見られないことでした。


なぜなのでしょうか?


<ペンギンの潜る能力>


ペンギンの場合、「泳ぐ」と言っても人間でいえば「潜水」している状態です。


私が泳いでいる時にイワトビペンギンと似たような状況といえば、背泳ぎで水中でバサロキックで潜水しながらスタートし、水面に浮かび上がる時かもしれません。


潜水で進みながら、少しずつ鼻から息を吐いて、水面に出る直前で一気に吐いてすぐに大きく吸い込んで酸素を取り込んでいます。


人間が泳ぐ場合の呼吸は、もちろん酸素を取り込むことがあるのですが、もう一つ大事なことは肺を空気で満たすことで浮力になっているようです。


もしかしたら、イワトビペンギンは潜水から一気に水上へ出て浮力を得るために、水面に顔を出す直前に一気に息を吐き出しているのだろうかと思いました。
でもそれなら、なぜ、フンボルトペンギンは同じような行動をしないのか、説明がつきません。


ペンギンが泳ぐ(潜る)のはどのような動きやどのような呼吸方法があるのか気になって、検索してみました。


2006年の北海道大学水産学部公開講座「ペンギンはいかにして長く潜るのか?」が公開されていました。

ペンギンの驚異的な潜水能力


水中は私たちのような肺呼吸動物にとって宇宙と同じくもっともチャレンジングな世界です。それは呼吸できない、高圧である(宇宙では逆ですが)、冷たい、といった困難さを伴うからです。コウテイペンギンは冷たい南極の海に10分ぐらいかけて500mまで繰り返し潜水できます。どうやってこのような驚異的なことができるのでしょう?


本当にそうですよね。
しかも常時、水の中で暮らすのとは違ってペンギンは水中と陸上のどちらの行動もできるわけですから、本当にすごい能力だと思います。


<「熱を逃がさない」と「冷却が必要」あたりかも>


その説明では、ペンギンは熱を水中に失わないための「羽毛と厚い皮下脂肪」があることとともに、「体深部の体温を下げ」て酸素消費をおさえていることが書かれています。

 つぎに、脳や消化管などの臓器の活動のために使われる酸素消費を押さえているらしいことがわかってきました。潜水中は餌をとりますが、消化はしなくてもいいですから胃腸は使わなくて言い訳です。海鳥の肝臓の腹側の温度を埋め込んだデータロガーによって計ると、潜水中は通常の体温より10度ぐらいも下がることがわかりました。それによってエネルギー消費を押さえられる訳です。脳の活動を低下させていいかは疑問です。はばたいて潜るわけですから筋肉の温度はさげていないでしょう。


見学したのがちょうど給餌タイムだったのですが、餌を食べるまではすごい勢いで泳ぎ回っていたのに、給餌タイムが終わると泳ぎが急にゆっくりになり、そうそうに陸地に上がって行きました。
たしかに、そのまま水中で消化していたら酸素消費量が増えて、負担になりますよね。



この「保温システム」についてもう少し詳しく書かれたものを探してみたら、「よちよち歩きのペンギン ペンたあず」というサイトの「保温・熱交換システム」がありました。


その中の「冷却システム」にこう書かれています。

 優れた保温・熱交換システムをもったペンギンだが、高温・多湿の環境ではかえって命を脅かす「熱中症」を引き起こす原因となる。また寒冷な地域で繁殖する種ほどちょっとした気温の上昇が体力の消耗につながる。アデリーペンギンなどは気温が4℃になっただけで「過熱の兆候」である。「開口呼吸(クチバシを開いて苦しそうに呼吸すること」を始める。エンペラーペンギンでは20℃、コガタペンギンでは25℃を越えると落ち着かなくなりストレスが強まる。

 こういう場合、温帯から熱帯に住むペンギン達に備わっている皮膚の露出部は、過剰な体熱を放出する有効な器官となる。彼らの脚・フリッパーの内側・顔面(クチバシの付け根付近)には皮膚がむき出しになった部分がある。

暑さに弱いので夏は公開されていなかったイワトビペンギンが一気に空気を吐き出すことと、暑さには比較的強いフンボルトペンギンの体から気泡がでるのも、もしかしたらこの「冷却」のためではないかと。
いえ、思いつきのレベルなのですけれど。


前回ペンギンを見ていた時には気づかなかったことが今回は見えたことに熱中していたら、ふと気づきました。


時々、ペンギンが側へよってきてじっと私を観察していることに。
こちらもまた観察されていたようです。




<つけたし>


その後、私のこの仮説は思いつきだったことがわかったのでした。



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