同業者だから時々助産師に対して辛辣なことを書いていますが、「だから助産師は」と言われれば、「いえほとんどの助産師は謙虚に真面目に働いています!」と言い返したい気持ちにもなり、心は千々に乱れます。
ただ、やはりあまりに情報伝達が偏りすぎているなあと感じますね。
ふわふわとした思い込みのような情報は雑誌やテキストで広がっていくのに、ホメオパシーとK2シロップの件やスリングのように信頼のできる危険情報はいっこうに伝わらないのです。
せっかくほとんどの助産師が日夜、頑張って周産期医療をささえているのに、その詰めの甘さと脇の甘さが信頼を損ねていることに気づいていない世界だと思います。
なぜ母乳育児や完全母乳に偏りすぎる風潮が危ないのか、なぜ院内助産とかアドバンス助産師という言葉が作られて行くのか、なぜ助産師の中に代替療法が広がるのかなどの問題の根本に目を向けようという助産師にはほとんど出会いません。
「あやしいよね」ぐらいには感じる人もいるのですが。
そればかりか、ネットでの助産師の世界の定点観測や、日々、外来や入院中に出会うお母さんたちから、「あー、またそんなことを」と思う情報が飛び込んできます。
<おひなまき>
生まれてすぐの新生児はモロー反射があるので、眠っていてもちょっとした刺激でビクッとして泣き出すことがあります。
そのため、きっと多くの分娩施設では新生児をバスタオルでくるむようにしているのではないかと思います。
ただ、生後2〜3日もするとビクッとしても大泣きしなくなってくるので、タオルをかけるだけでも大丈夫です。
それに目をつけた商品がトコちゃんベルトの会社から、何年前ぐらいでしょうか、販売され始めました。
ただ、トコちゃんベルトについては妊娠中や産後のお母さんから「付け方を教えてください」と言われることが今もけっこうあるのですが、このおひなまきについては私自身はお母さんから聞かれたことはなかったので、それほど広がってはいないのだろうと思っていました。
ところが最近、入院時にこのおひなまきの布を持って来られた方がいました。
どう説明しようかと悩みましたが、結局、その赤ちゃんは何もしなくてもあまり泣かない赤ちゃんだったことと、おそらく経産婦さんで赤ちゃんに慣れていたこともあって、ほとんど出番はなさそうでした。
さて、その販売元では「効能」が書かれています。
簡単に赤ちゃんをまるまる姿勢でくるめるおひなまき。反りがちな赤ちゃん、泣いてばかりの赤ちゃんも泣き止んでぐっすり眠れます。くるまれると皮膚からの均等な刺激が脳に伝わって脳が育ち、内側から布を押しながら体を動かすことで筋肉が育ちます。
こちらのサイトでは、こんな紹介が書かれています。
アメリカやイギリス、オランダの産院では、何年も前から新生児を布でグルグル巻きに「しっかりくるむ」スワッドリングという方法が一般的に行われています。最近ようやく日本でも赤ちゃんを「しっかりくるむ」ことを推奨する助産師さんが少しずつですが増えてきました。
そのサイトの途中にこけしのような体勢にくるまれた赤ちゃんが写っていますが、「何十年も前から」こうした方法でくるまれていた国の赤ちゃんに股関節脱臼が起こりやすいことを、私は何かの機会に学びました。
だから、こういう方法は勧めてはいないのですけれど。
こういうものが流行るのは、どちらかというと「赤ちゃんを泣き止ませたい」「早く眠って欲しい」という大人の気持ちの問題のような気がしますね。
<おとなまきに仰天>
さて、久しぶりにおひなまきという言葉を聞いたので検索したところ、「おとなまき」について書かれているサイトがいくつかありました。
「おひなまき」の書き間違いかと思ったら、そこには大人がおひなまきのような布で巻かれた写真があってびっくり。
しかも助産師のブログです。
リンクする勇気はないので、各自検索してみてください。
あ〜あ、だから助産師の世界はおかしいのだとがっかり。
同じ教育を受け、同じ国家試験を受けたのにどうしてこうなるのでしょうか。