「乳児用ミルクのあれこれ」 まとめ

助産師というのは乳児用ミルクと最も身近に働いている仕事ですが、案外、この乳児用ミルクについて知らなかったと思うようになったのがここ10年ほどのことでした。


私が助産師になった1980年代終わり頃から、日本国内でもボチボチと「母乳の素晴らしさ」を多く耳にするようになって、反面、乳児用ミルクへの風当たりが強くなっていきました。


助産師になる前の1980年代半ばのインドシナ難民キャンプや海外医療援助では必需品だった粉ミルクが、いつの間にか「与えてはいけないもの」のような扱いを受けるようになり、その社会の変化の激しさに驚いています。


もし本当に途上国で粉ミルクが乳児の感染症に影響をしたのであれば、その答えは清潔な水や哺乳瓶の取り扱いが答えではないかと思うのですが、なぜ粉ミルクを使わないことが答えになっていったのだろう。


途上国を少し垣間みた経験からは、粉ミルクへの批判は問題の本質ではないのではないかと思うのですが、世の中というのは風向きが変わるとそれに抵抗することの難しさのようなものをこの乳児用ミルクへの風当たりの強さに感じています。


乳児用ミルクには罪はないのに、もしかしたら多国籍企業への批判が乳児用ミルクの否定になってしまって、坊主憎けりゃ袈裟まで憎いになっているのではないかと思って書いた記事です。


1. 「衛生的な」調乳とは
2. 衛生的に調乳するとは
3. 液状ミルクのメリットー滅菌されている
4. サカザキ菌に関する資料
5. ウオーターサーバーの安全性
6. 搾乳の衛生的管理とは
7. ミルクを介した乳児への感染はどれくらいあるのか
8. 哺乳ビンの消毒はどうすればよいか
9. 「母乳が一番」を強調する時代
10. 乳児用ミルクがつくられ始めた時代
11. 缶入りの練乳はどのように乳児に使われていたか
12. 缶入り練乳から粉ミルクの時代へ
13. 栄養状態の悪い乳児と乳児用ミルク
14. 栄養失調児の親もまた栄養不足
15. 母乳の免疫と栄養不足のトレードオフ
16. UNICEFの母乳推進運動の矛盾 その1
17.   〃           その2
18. 母乳推進運動の「カプセルの内と外」
19. ネスレボイコットが始まった頃の社会
20. 小児科医シシリー・ウイリアム氏とは
21. ネスレボイコットまでの経緯
22. 「なぜ世界の半分が飢えるのか」
23. 医学的議論のないまま広がった粉ミルク批判
24. 粉ミルクは栄養失調を増やしたのか
25. 粉ミルクは乳児感染症を増やしたのか
26. 途上国の母親と先進国の母親
27. Meekさんのコメントを紹介します
28. 人工栄養と腸内細菌について
29. 「育児用乳製品の店」があった時代とは
30. 安全優先のための計画授乳
31. ミルクに関する「事実」とは何かー夏季熱
32. 乳児用ミルクの改良の変遷
33. 「母乳並みのミルクの誕生」
34. 乳児用ミルクの改良ー1988〜1990年代
35. 歴史は繰り返すーミルク受難
36. 「ミルクの品質向上が離乳方法を変えた」
37. なぜ「男性の暮らし方」になるのだろう?
38. ミルク・ナースとは
39. 日本では誰がどのように乳児用ミルクの説明をしているか
40. 乳児用ミルクの「生活史」を知る
41. 周産期・小児の専門栄養士なんてどうでしょうか
42. 個人的体験談ではなくて標準化された調乳・授乳の啓蒙を
43. 「適切な授乳」を普遍的に考える
44. 東京は酪農の発祥地
45. 液状乳児用ミルク元年
46. 調乳ずみミルクの次は使い捨て乳首



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「行間を読む52 <母乳推進運動と調整乳反対キャンペーン>」
「事実とは何か28 <「正義感」と「真実」のゆくえ>」
「事実とは何か29 <「母乳だけ」で新生児の生命が危機に陥ることもある>」