思い込みと妄想 27 <暗示をかけられているのは誰か>

ヒプノセラピーについて検索して読んでいるけれど、なんだか雲をつかむような話でよくわかりません。
ですから、その「療法」自体への議論まではとてもできませんが、ひっかかったのが「ヒプノ赤ちゃん」という言葉です。



この言葉ですぐに思い出したのが、マクロビベビーです。
妊娠中にマクロビ食を実践して生まれた赤ちゃんのことをこう呼ぶ人たちがいることを知ったのは、2010年頃でした。


まあおいしい母乳を飲んで育った子は表情が豊かとか、病院で生まれた赤ちゃんは表情が乏しいといった思い込みが、まことしやかに広がっていくのが出産界隈なので驚くこともないのかもしれませんが。


それでも無事に生まれて来た我が子を、「他の赤ちゃんに比べて、○○をしたから素晴らしい赤ちゃん」と信じる親がでてきたことには、なにか危なさを感じてしまいます。


「うちの子は世界一かわいい」という親ばかは微笑ましいのですが、その一線を越えた何かが・・・。



「ヒプノ赤ちゃん」ってなんでしょうか?


<ヒプノ赤ちゃん>



「日本ヒプノ赤ちゃん協会」というサイトに、「医療従事者の皆様へ」という説明がありました。
「催眠出産」と聞いただけで門前払いを受けたことから、この説明が書かれたようです。


「"ヒプノ赤ちゃん"ってどんなプログラム?」には以下のように書かれています。

「ヒプノ赤ちゃん」は、代替手段として麻酔の代わりに催眠によって痛みを取り除く、といった消極的なものではなく、主体性を持って自分たち(母と父と子ども)の出産に取り組み、本来女性の身体に備わっている穏やかで快適に「生む力」を最大限に引き出す主産教育プログラムです。
(引用者注:原文が「主産」になっているのですが、そこにも意味があるのかはわかりません)

「ヒプノ赤ちゃん」を学んだ産婦は、「恐れ」という最も衰弱力の強い感情が、どのように出産のメカニズムに影響を与えるかを学んでいます。

潜在意識に埋め込まれている世界共通の「出産」「分娩」に対するネガティブなイメージや暗示が実際の分娩に影響しないよう、出産について正しく学び、ポジティブに変換され、セルフマネージメントが行えるようにトレーニング(呼吸法、暗示技法/アファメーション、視覚化技法/ビジュアライゼーション等しています。


読んでいるとソフロロジーに似ている印象です。


で、最後まで読んでも、産婦さんが分娩に集中する方法については書かれているのですが、結局「ヒプノ赤ちゃん」とは何を指すのか書かれていませんでした。


冒頭にあるように産婦さんの「生む(原文のまま)力を最大限に引き出す」ものであって、胎児の「生まれる力」には暗示はかけられないということでしょう。


<暗示をかけられている「自分」>


「母乳で育てられた赤ちゃんは表情が豊か」「病院で生まれた赤ちゃんは表情が乏しい」と思いたい人はどういう気持ちなのか。
それは、「自分はミルクを使わずに頑張った」とか「病院の出産ではなく、助産所や自宅で産んだ」お母さんの気持ちそのものなのだろうと思います。


どう思うと気持ちは自由ですが、せめて自分の家族や友人へのおしゃべりに留めておく内容なのではないかと思います。



ところが、それがネットや書籍で公言すると、「そんなに素晴らしい何かがあるのなら」とまことしやかに社会に広がっていくのかもしれません。
誰か周囲の人が「そんなの思い込み」と一蹴してくれたら、踏みとどまることができたかもしれないのですけれど。



「なんとか赤ちゃん」という呼び名は、実は自分自身のこだわりと思い込みがこめられていることにも気づかなくなりやすい、ちょっと危ないネーミングかもしれません。



その奥深いところにある気持ちは、「大事な自分」「自分はすごい」「自分は人とは違う特別な存在」という自己愛なのですから。



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