思い込みと妄想 28 <深みにはまる前に引き上げる勇気を>

以前に比べると、ネットでご自身の出産体験を公開されている方がとても多くなりました。


「なるほど、この状況を産婦さんはこう受け止めるのか」など、興味深く読んでいます。


そして、「○○方法をしたから」「○○で(自宅とか、助産所とか、あるいは産院とか)産んだからこんなに幸せで満足なお産になった」という感想も、それを否定する必要はないと思っています。
たとえそれが暗示であっても、その個人的体験談はその人のものだからです。


ただ、日々、分娩を見ていると、ある程度「この経過は経産婦さんだから」とか法則性がわかります。


たとえば、こちらの記事で紹介した体験談に、「波動が大きくなるにつれ、呼吸が浅くなってしまいまい、上手く波動に乗れずにいましたが主人も呼吸をリードしてくれたりと、そばに居てくれて本当に心強かったです」という部分は、おそらく初産婦さんの全開する直前のあたりだろうと見当がつきます。


ヒプノ赤ちゃんの方法がうまくいかなくて呼吸が乱れたのでもなく、そういう激しい時期があるからです。
「もう止めたい!帝王切開にして欲しい!」と言いたくなる人もいる時期です。
もう少ししたら急に眠そうになってしばらく眠って、次にいきみたい感じが出始めていきめば楽になるだろうと、予測できる段階です。


そして全開していきむ頃には、「波動と波動の間は冷静にいられる」のが初産婦さんのお産なのです。



それでももっと何かすがるもの(暗示)や薬(無痛分娩)が必要な方が、それを選択するのはご本人の気持ちを尊重したらよいかと思います。


ということで、あくまでも個人的な体験談を否定する必要はないのですが、「初めてのお産の進みかた」を分娩進行中にきちんと説明しながら対応できれば、同じようなお産の傾向になります。



<自分に必要だった暗示を子どもに使う>



ところが、介助する助産師や産科スタッフが、そのお産の法則性を十分に観察して言語化しようとしてこなかったので、「すごい、こんなにスムーズなお産になるなんて」と飛びついてしまうのではないかと思います。


ホメオパシーを使ったり、ナントカ法の講座を受けて資格をとって、お母さんたちに勧める。


暗示が必要なのは産婦さんや助産師といった大人の方だけなのですが、お産だけで済まずに、赤ちゃんや子どもにもそれを使おうとし始めるので困ったものです。


母乳相談といった日本助産師会で規定されている助産師業務の範疇を越えて、「家族の幸せ」の相談まで行っているようです。


ヒプノセラピーを取り入れている助産師のHPには、こんなことが書かれています。

赤ちゃんはお母さんとお父さんを選んで生まれてくると言われています。子育て、家族は魂の学びがあるものあもしれません。仕事、人間関係、いろいろな出来事は人生の学びの時かもしれません。学びに気づく機会をお手伝いできたらと思っています。

夫婦(パートナー)や親子など、相手を想う気持ちとご自分の気持ちを確認し、お互いが折り合いをつけられるよう支援していきます。

ちなみに後者の場合、料金は5万円と書かれています。


またある助産師のHPでは、「学校に行くことができないお子さん(小学生以上)、またはその親御さん」に「ヒプノセラピストとして使命を果たす」と書かれています。


前世療法とか退行療法を子どもに使うのだけは止めて欲しい。


暗示を必要なのは誰なのかということに気づいて、深みにはまる前に引き上げられるとよいのですけれど。



それとも、信じ込んでしまった人には「記憶の錯覚」という言葉も届かないでしょうか。



それにしてもどうして助産師にはこういう暗示を必要とする人が多い印象があるのか。
何がそうさせるのか。
助産師内部から調査・研究してくれる人がいると良いのですけれど。




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