先日、父の面会に行った時のこと、動くはずのなかった右手の親指と人差し指が動くようになっていました。
1年ちょっと前に二度目の脳梗塞で、右半身が完全に麻痺しました。
最初の脳梗塞のあとは、自主的に指を伸ばしたりしてリハビリのようなしぐさがあったのですが、今回は父もあきらめたのか、麻痺した右手をたまにさわるぐらいでした。
認知症の方でも動きたいという気持ちでリハビリが上手くいく様子をみて父にも多いに期待しましたが、残念ながら父には意欲がなくなってしまったようです。
ベッドから起き上がることも、車いすへの移動も介助が必要なままです。
一時は車いすの運転も上達したのですが、最近はあまり自分で動こうとはしていませんでした。
食事もすべて左手でして、右腕はわずかに持ち上がるぐらいのままでした。
その右手の親指と人差し指が動いているのです。
わずかにCの時を作るような動きもしています。
そのCの字の指先で、ストローをつかんで飲もうとしていました。
「すごい!動くようになったの?」と聞きましたが、父は何を喜ばれているのかよくわからないようです。
何がきっかけだったのだろうと、この突然の変化を考えたのですが、この1ヶ月ほど父は皮膚をかきむしらないように動く左手にミトンをつけていました。
そのミトンが気になるようで、面会に行くたびに口でそれを齧ってはずそうとしていました。
その強い意志が、右手の指まで動かさせたのでしょうか。
最近の脳神経疾患については不勉強ですが、私が看護師になったばかりの1980年代前半に勤務した外科病棟でも、脳出血で半年ほど意識が全くなかった患者さんが、半年を過ぎる頃から突然ぐんぐんと回復し始めて、冗談をいうほどにまでなったことに驚かされたことがありました。
父も最初の脳梗塞では軽かったためかゆっくり機能回復して驚いたのですが、今回はあきらめていました。
そして、次に脳梗塞発作を起こした場合のことを考えて延命治療は断ることを決めていました。
父の指が動く様子を見て、私には予期しないほどこみ上げてくる喜びがありました。
そして、いつかその父の生死の判断をしなければいけないことに、初めて怖さを感じました。
仕事では、そういう場面に何度も立ち会っていたのですが。
「記憶についてのあれこれ まとめ」はこちら。