簡単なことを難しくしているのではないか 9 <看護師を育てるのに必要な年数>

医療介護系のサイトCBnews、2016年5月18日に「看護師の教育年限、4年に延長をー日看協が要望」という記事がありました。


 日本看護協会(日看協)は、厚生労働省に対して、看護師養成の教育年限を現行の3年から4年に延長することなど盛り込んだ要望書を提出した。要望書は、来年度の予算編成への反映を求めたもので、病院看護師を対象とした在宅療養や退院支援についての研修体制の充実も要望している。

 看護師の教育については、2009年に看護師基礎教育のカリキュラムが改正され、履修内容が追加された。また、総時間数は3000時間となり、以前よりも105時間増えた。
 要望書では、昨年のカリキュラム改正で履修内容が追加されたにも係らず、教育の総時間数は「ほとんど変わらず、教育の過密化が一層進んだ」指摘。また、1科目当たりの実習時間は激減し、実践能力を育成するために必要な教育時間が確保されていないとした。その上で、こうした教育の不足が、新人看護師の早期離職や医療安全面でのリスクの増大の要因にもなっているとし、「教育の抜本的な見直しは一刻の猶予もない状況」とした。
 さらに、地域包括ケアシステムの中で、今後は看護師の役割が多様化・高度化することが想定されることも踏まえ、看護師が安全な看護をするために不可欠な教育内容を追加し、その年限を4年に延長することを要望した。

 また、今後は入院早期や入院前の外来受診から在宅療養を想定したさまざまな調整や退院支援の必要性が高まると予測。その上で、病棟などでケアをする看護職員にも在宅療養や退院支援の知識が求められることから、病院看護師を対象とした退院支援などに関する研修の充実を要求。その研修の受講を後押しするよう財政措置を求めた。(以下、略)

 
看護教育についてはよくわからないのですが、この記事を読んでまず感じたのが「看護教育の大学化」という言葉が使われていなかったことです。これまでの流れからいえば、「看護教育を4年間にする」= 看護基礎教育の大学化でした。


今までの看護教育の「大学化」や「准看護師廃止」への、熱烈というか悲願のような方向へと現実に動き出して、一旦見直しを図っているのだと信じたいものです。


<国家試験までに4年、ではなく国家試験前後の4年に>
 

1980年代初頭に看護師になった頃に比べれば、医療は本当に飛躍的に進歩し、複雑になりました。
それを考えると、当時3年間で学んでいた内容だけではとうてい無理なので、看護教育に携わる方々は大変だろうと思います。


そして当時は、看護学校3年生の実習では、実際に採血をしたり患者さんへの直接的な処置も、病棟の看護師さんとともに実施していましたから、卒業後は即戦力として働いていました。
現在は、患者さんへの安全性と倫理的な配慮もあって国家試験合格までは見学だけになっているので、卒業後に新卒を育てる職場は本当に手取り足取りなので大変です。


でもこれも時代の流れなので、それに合わせて教育も卒後教育の方法も変わる必要があります。


ただ著しい医学や医療の進歩は同じなのに、医師の場合は「もっと医学部の教育年限を長く」という方向ではないのですから、看護教育ももう少し別の道があるように思います。


そんなことを「看護職を育てるのには4年は必要」で、こう書きました。

大事なのは国家資格取得までの年数ではなく、国家資格をはさんだ何年間かが現実に看護職を育てるために必要なのかという議論ではないかと思います。

ところが「准看護師を廃止して看護資格の1本化」をうたっていた看護協会が率先して「看護基礎教育の大学化」を押しすすめた結果はどうだったのでしょうか。


時代によって資格が再編されていくことはしかたがないことです。
ところが、「看護の大学教育なら、医療の安全性が高まる」ということが書かれているのをみるたびに、「正看護師」と「准看護師」という軋轢を遺してしまったあの失敗が生かされていないのではないかと思います。


「大学」という制度と学歴にこだわったばかりに。


「看護職を育てるのに4年間は必要」
そこが揺らがなければ、前の時代の教育で資格を取得して現場の大事な働き手になっている人たちのプライドを傷つけることもなく、新しい資格へと変化していけるのではないかと思います。


そして助産師と保健師は、その「臨床経験1年を含む4年」のあとに、1年間の教育で専門看護師というしくみにすればよいのではないかと思います。
そういうシンプルなシステムになかなかならないのは、「自律した助産師」とか「助産師は大学院で」といったこだわりが、足を引っ張っているのかもしれませんね。



端から見れば、看護職が「大学教育」にこだわりすぎたために、簡単なことを難しくしてしまったのではないかという印象。


それにしても、看護師の資格をとるために3年でも授業料や生活費は大変なのに、4年間は大変そうですね。
もし、1970年代後半に看護教育の大学化が進んでいたら、公務員の我が家では看護師になるのも難しかったことでしょう。


皆さん、どうやって学費を捻出しているのでしょうか。





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