「看護基礎教育の大学化」のまとめ

看護大学は必要だと思っていました。


臨床の看護職を育てるためというよりは、管理職や研究者を育てるためです。


看護職になって30数年。
医療や医学はどんどん進歩しているのに、看護はなかなか標準化が図られない。


他の施設はこんな時にどう対応しているのだろう。
私たちがまだ知らないような怖いケースや珍しいケースがあるのだろうか。
そういう臨床経験の全体像を知って活かしていけるようなシステムがなかなかできない。


たとえば、周産期看護研究センターのような組織ができて、全国の産婦人科施設の臨床で悩んだり遭遇したことが集められて分析されていくとよいのにと思っています。
そこで作られた看護基準や手順、あるいはリスクマネージメントに関する情報は毎年アップデートされて、どの施設からもその情報にアクセスできる。
そんなシステム。


出産や介護などで臨床を離れることがあっても、その研究センターの情報を読むことで現在の周産期や婦人科の看護の実際がわかり、臨床へ戻る準備ができる。
そんなシステム。


国家資格取得後の長いキャリアを、その時代の医療の動向からはずれることなく自身の研鑽をはかっていける。
そんなシステム。


思いつきや信念でなにかの方法が導入されるのではなく、導入する価値があるのか、導入することのリスクはなにか、そこまで見通す能力のある人たちを育て、全国で統一した看護研究センターを作るためには看護学を核にした大学教育も必要だろうと思います。


そうした研究のもとに国家資格のレベルが決められていくのであれば、国家資格受験のためのカリキュラムには「大学」が必ずしも必要ではないのではないでしょうか。


ましてや、その国家資格のあとにアドバンス助産師なんて民間資格は不要。


臨床ではさまざまな問題に気づいているのに、それを全体の問題として解決するための手段がない。
それなのに、「院内助産」とか「自律した助産師」とかあさっての方向にばかり向いてしまう。


看護基礎教育の大学化の流れとともにあった30数年の間に、感じてきたことを書いています。


1. 引き返すなら今かもしれない
2. アメリカの医療と看護の現状
3. 看護職種の2極化と、無資格者の導入
4. アメリカの医療を支える海外からの医療従事者
5. 世界的な看護師不足の裏にあるもの
6. スキルミクスと「質の高い看護」
7. 卒後教育の場はどうなるのか
8. 看護の方向性を誰が決めているのか
9. 「スキルミクス」と「看護資格一本化」の矛盾
10. 3年から4年教育のからくり
11. 「なぜ4年制大学化が必要なのか」の矛盾
12. 看護職にとって「高い人間性」「広い視野」とは
13. 「質の高い看護」とケアの独善性
14. 大学のメリットとは
15. 看護を教える人
16. 看護学をめぐる時代の移り変わり
17. 看護業務基準と看護手順
18. なぜ標準的な手順が作られないのか
19. 「看護診断」を受け入れてしまった看護学
20. 各大学の特殊性や独自性の前に
21. 一般教養として学びたいもの
22. 看護職を育てるのには4年は必要
23. 大学化の矛盾・・・保健師教育
24. 大学化の矛盾・・・保健師と助産師の教育期間
25. 大学化の矛盾・・・助産師
26. 「大学化」が目的ではなく、専門性が大事では
27. 日本の「看護教育の大学化」はどこへ行くのか