10年ひとむかし 12 <体重を測る>

今は、当たり前のように家庭にも体重計があります。


私が小学生だった1970年代には、すでに家に体重計がありました。
アナログのタイプのものです。


1960年代前半の幼児の頃は、通っていた銭湯の大きな体重計で測っていたのではないかと思うのですが、このあたりは曖昧な記憶です。


家庭用の体重計が普及し始めたのはいつ頃だったのでしょうか。
そしてその体重計も今やデジタルは当たり前で、体脂肪測定などさまざまな機能がついています。


ただし、それらはある程度大きくなった幼児や小児、そして成人向けの体重計です。


新生児の体重というデーターは、いつ頃からどのように取られ始めたのでしょうか。
先日来、新生児の生理的体重減少について考えていたら気になりました。


<私の体重はどのように測定されたのだろう>


今、日本の産科施設にはどこでも1gから測定できるベビー用の体重計があることでしょう。


ですから出生時体重も、「2856g」とか「3001g」とか一ケタまで書かれています。
まあ、出生直後の新生児を体重計に乗せるとギャン泣きしてしまい、なかなか表示が固定されないので、もしかしたら2〜3gぐらいの誤差はあるかもしれません。


さて、私の母子手帳に書かれている出生時体重は3500gでした。


現代なら、「わーすごい!」と言われることでしょう。
3510gでも3497gでもなく、3500gぴったりなのですから。



でも当時は目盛り自体が大きくて、たぶん、3500gというよりは3.5kgという感覚だったのではないかと思っています。



1960年初頭、私が生まれた産院では、どんな体重計を使っていたのでしょうか。



<乳児の体重のデーターができた>



1960年代を境にして医療機関での出産へと大きく時代が変わったのですが、安全性の向上だけでなく、さまざまな基礎データーを取ることができるようになったのかもしれません。


1960年代以降に生まれた世代であれば、あるていど正確に出生時体重を測定していることでしょう。
出生時体重と身長というデーターが集積されて基準値が作成されたことが、「周産期医学必修知識第6版」(東京医学社、2006年)の「出生時体格基準値」に書かれています。

我が国では1965年に船川が体重、身長の基準値を作成して以来、いくつかの基準値が報告されている。


おそらく、施設分娩以前では、家庭に大人用の体重計さえなかったことでしょうし、生まれたときの正確な体重を測定して記録に残している人の方が少ないのかもしれませんね。


<体重計の変遷のあれこれ>


私のこの体重計の記憶は正確なのだろうかと気になって検索したら、TANITAの「からだをはかることの歴史と変遷」に興味深い話が乗っていました。


ヘルスメーターの誕生


タニタが体重計を「ヘルスメーター」と名付けて製造・販売を開始したのは1959年(昭和34年)です。今でも「ヘルスメーター」という名称で呼んでいますが、当時と今では「ヘルス=健康」に込められた意味は、まったく違いました。昔のヘルス(=健康)は体重が増加することを意味していたのです。

体重計測の歴史


体重をはかる歴史は古く、インドのムガール王朝のある王様が毎年自身の誕生日に、年々増えていく自分の体重をはかり国民に告知するようになったのがその起源と言われています。当時は飢餓が身近だった時代。体重が増えていくということが富と権力の象徴でした。このため王様の体重の増加は、国民にとっても国の繁栄を意味しているとされ、非常に喜ばしいことだったのです。日本で体重を習慣的に測るようになったのは、1930年代のことで比較的歴史が浅いと言えます。当時の死のトップは結核。やせている人よりも太っていて元気な人のほうが結核などの感染症にかかりにくいという面からも、体重が多い=健康と見られていたのでしょう。

たしかに、東南アジアで暮らしていたときには、私は現地の女性に比べて太い、大きいと言われていましたが、むしろその地域の女性にすると痩せていくことのほうが不安で、私の体格を羨望の眼差しでみていたような印象もありました。


あ、横道にそれてしまいましたが、日本で体重計が一般的になったのは1960年代に入ってからのようですね。


同じTANITAの沿革に、体重計の変遷があります。
1959年にヘルスメーターが発売され、1978年にはデジタルヘルスも発売され、1979年にはヘルスメーター1000万台売り上げ達成とあります。


そして1974年にはベビースケールが発売されています。
アナログ表示のタイプですが、それでもこのあたりから新生児や乳児の体重測定の精度が増したのかもしれません。



そして体重計が一般的になる以前は、「出生後の赤ちゃんがなんとなく痩せていく」という感覚的なものと、不安しかなかったことでしょう。


ところが、体重計ができたことで、出生直後から毎日連続して体重を測定できるようになった。
そして全国の新生児のデーターが集められて、体感がデーターという客観的なものになり、「出生後しばらくは新生児の体重は減少する」と言う事実が明らかにされたのも、そう昔のことではないと言えそうです。






「10年ひとむかし」のまとめはこちら