気持ちの問題 28 <人とは違う産み方をしたい>

なんだかうさぎ林檎さんに呼ばれたような気がするので、ロータスバースの続きです。


6月に「へその緒と胎盤を切らずに放置すると・・・?『ロータスバース』出産方法が海外ブーム」という記事が流れていたので、一応コピーしてとっておいたのでした。
まあ、「シリアルキラー、猟奇殺人、奇病、封印作品、海外のグロテスクなニュース」のサイトらしいので、そういうニュースは無意識のうちに遠ざけて平穏な生活を望んでいる人が大半ではないかと思っています。


ただ、その「猟奇的な」ニュアンスがうまく通じなくて、「すごい!」「やってみたい!」という気持ちにのめり込んでしまった人には、何を言っても伝わらないのだろうなと思います。


さて、その記事はこんな感じ。

 自宅出産や水中出産など、出産の方法は人それぞれだが、諸外国では「ロータスバース」と呼ばれている出産が人気を博している。これは、産まれてきた赤ちゃんのへその緒を切らず、一緒にでてきた胎盤と繋がったままにして、自然に取れるのを待つというもの。2016年5月13日、英紙「DailyMail」が、ロータスバースで産まれた赤ちゃんの様子を報じている。


赤ちゃんとつながった大きな胎盤


 1枚目の写真には、気持ち良さそうに眠る赤ちゃんと、その半分ほどの大きさまで肥大した胎盤が写っている。赤ちゃんに異常はみられないが、そのおへそにはしっかりとへその緒が繋がった状態だ。


 2枚目の写真は、土気色に変色した胎盤のアップ。だが胎盤の上には、透明で四角い固形物と、花びらのようなものが撒かれている。一見した限りでは胎盤とは思えず、アマゾンに生息しているような食中植物に見えなくもない。


 今回ロータスバースに挑んだアレン・ヴェイルさんは、過去に妹のロータスバースにも立ち会っており、新生児に取りついた胎盤を目にしたときは驚愕したという。当時は、彼女もロータスバースについてよく知らなかったため「かなりショックだった」と振り返る。


 ロータスバースはハサミを用いないため、感染症を引き起こすことがない。また、胎盤とへその緒に残った血液や栄養が残らず赤ちゃんに送られるというメリットがあり、諸外国で人気を博しつつある。そのような説明を受ける中で、アレンさんは自分の子どもが生まれる時も同じ方法で出産したいと思うようになったという。


 かくして、アレンさんはロータスバースを実践。匂いがきつくならないように胎盤に岩塩とバラの花びらを振りかけ、汚れないよう冷却袋に保存するなど、あらゆる試みが行われた。しかし、それでも大変なことはあったようで「赤ちゃんを動かすときはちょっと厄介だった」らしい。へその緒と胎盤は、通常2〜10日ほど自然乾燥させると取れるものなので、この間に赤ちゃんを動かす際は、へその緒を切らないよう全神経を集中する必要がある。たしかに、この苦労は尋常ではないだろう。


 だがアレンさんは、ロータスバースにはたくさんのメリットがあったと語っている。そのひとつが、赤ちゃんがそれほど泣かなかったことだ。胎盤と繋がっていることの安心感から起こるものかは不明だが、アレンさんは「最善な出産方法だと思った」という。現在アレンさんは、第2子のために、胎盤カプセル化を検討している。これは、錠剤にした胎盤を食べること。それにより、母乳の出が良くなったり、妊娠合併症や産後鬱になりにくく、第2子を妊娠する身体を整えることができるのだとか。


 日本にはまだまだ馴染みのないロータスバース。メリットがたくさんあるようなので、これから日本でも普及していくかもしれない。


「猟奇殺人」とか「グロテスクなニュース」サイトの人でさえ、メリットに納得して「日本でも普及していくかもしれない」なんて期待を書いてしまうほど、妊娠・出産は尋常ではない精神状態にさせる魔界の入り口なのかもしれないですね。いやはや。


胎盤は血液の豊富な臓器なので常温ならすぐに腐敗し始めるし、分娩時に産道でさまざまな菌が付着して出てくるので常温で保存すれば病原菌の温床になることでしょう。


その腐敗した胎盤をカプセルにして飲むつもりなのでしょうか?


腐敗しはじめた臓器を新生児につけるリスクは気にならずに、ハサミを用いないと感染症にならないとか栄養がすべて児にいくと考えているのは、思い込みと妄想でしかないのですけれどね。


ちなみに引用記事の赤字で強調した部分は、産科に勤務していたらこうは感じないし、こういう表現はしないなと違和感を感じた部分です。


分娩時に清潔な物品や環境を確保し、きちんと滅菌した臍帯剪刀を用いれば破傷風を初めとした分娩時の感染症のリスクを減らすことができます。


それでも、時に、出生後数時間ぐらいから元気がなくなったり発熱して、原因不明の感染症で治療が必要な新生児がいます。
それほど感染に無防備な胎児から新生児の時期に、あえて腐るようなものをそばに置いたりはしないほうがよいと思うのが普通でしょう。


でも、こういう話をしても理解してもらえないのでしょうね、きっと。


だって、ロータスバースはただ胎盤を切り離さないというだけではなく、「いどむ」ものであり、「出産方法」なのですから。
それは誰のため?
ロータスバースで産まれた(生まれたではなく)赤ちゃんを産んだ私のため」なのでしょう。


人とは違う産み方にこだわりたい、そんな気持ちの問題なのでしょうから。



まあ、人気になっているといっても、日々産婦さんと接している私たちからみればごくごく稀な人たちでしょう。






「気持ちの問題」まとめはこちら