思い込みと妄想 30 <コールドミールからあっちの世界へ>

ドイツのように夕食は火を使わずにハムやチーズですませることをコールドミールと呼ぶことは、犬養道子さんの本で知った記憶があります。


コールドミールで検索すると、やはり手軽に夕食を済ませる、あるいは昼食に手をかけた食事をゆっくりととることにカルチャーショックを受けている人のブログがいくつかありました。


その中にドイツで暮らしている方が、ことわざを紹介した情報サイトがありました。

ドイツのことわざに次のようなものがあります。
"朝食は皇帝のように、昼食は王様のように、夕食は乞食のように"
"1日3食のうち、2食は自分のため、1食は医者のため"
(つまり、1日2食がよく、3食にすると病院を設けさせるために食べているようなもの、ということ)


皇帝と王様の違いはよくわからないけれど、ふーんと感心して読んでいくと、「BIO(オーガニック)ショップが急増中」で、以下のように書かれていてアンテナがピッと反応したのでした。

また、BIO(オーガニック)に感心のある人も多く、多くのBIOショップがあります。普通のものより、少し高めになりますが、利用者も増えて来ています。更に、意識の高い人は小麦などがリーキーガット(腸管壁浸漏症候群)の原因になるということから、スペルと小麦を使用したパンやグルテンフリーの商品を選択する人も増えています。

書き出しは「夕飯は簡単にして子供との時間を作る」だったのですが、最後は「質素な食事」「消化器官を休める」で締めくくられています。



<医学用語のようで医学用語でないもの>


リーキーガットという言葉を知ったのは、うさぎ林檎さんのtwitterでした。
夜中ひっそりと流されている畝山智香子先生の「食品安全情報blog」のまとめのおかげです。


その「食品安全情報ブログ」の2013年7月5日の記事に「元気で:リーキーガット?」という海外の記事が紹介されています。


 いつの時代も人々は慢性疾患を説明できる「統一理論」に興味がある。時にそれはフリーラジカルだったり炎症だったりする。そして今流行なのは「リーキーガット」である。インターネットをさまようとこの「症候群」が流行していてほとんどの病気の原因であるという印象を受けるだろう。多くの代替医療ラクティショナーがこれを支持していて、それを治すと称するサプリメントや治療法を宣伝している。
 リーキーガット説は以下のようなものである:大腸にはたくさんの最近がいてそれらには重要な役割がある。医薬品や飲酒やストレスや食品などで腸が傷つくと細胞をくっつけているタイトジャンクションが緩んで細菌などが「漏れ(リークし)」血流に入る。これがあらゆる悪いことの原因とされる。
 最近私はリーキーガットについての論文をレビューし、過去15年で数百の研究が健康との関連を示唆していることを発見した。最も興味深い研究は2011年にClinical Reviews in Allergy & Immunologyに発表されたもので腸の透過性増加が遺伝要因のある人の自己免疫疾患に寄与している可能性があることを注記しているものであった。しかしそれでも根拠は極めて予備的なもので主に理論的なものである。
 腸内細菌と人の健康に関連があることは間違いがない。遺伝、食事、環境が影響する。しかし「リーキーガット」がほんとうに慢性疾患の原因かどうかは不明である。これは非常に複雑な話で、我々はまだ理解し始めたばかりである
 従って、インターネットやテレビでみる単純な主張は信じないように。特に「リーキーガット症候群」があらゆる病気の原因で、それを治すサプリメントや治療法があるとプラクティショナーが言う場合には注意せよ。

数百の研究論文がある。
ただし、それは「根拠は極めて予備的なもので主に理論的なものである」。
つまり「仮説」にすぎないということなのでしょう。
医学の装いでも、野心的研究課題なのかどうか見極めるのは、本当にむずかしいところ。


「仮説」を越えて思い込むと、専門用語の形新しい疾患や情報をたくみに取り入れられた妄想にはまりこむ危険があちこちにありますね。



たとえば冒頭で紹介したサイトでも「消化管を休める」とあるのですが、こんな何気ない言葉も思わぬ妄想の罠にはまるので要注意。
「○○を食べない」「△△は危険」といった、フードファデイズムにも近づいてしまいそうです。


「ドイツのように夕飯は簡単にして子供との時間を作る」から、思えば遠くに来たものです。





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