水のあれこれ 47 <水の映像>

「10年ひとむかし」の続きなのですが、オリンピックや競泳大会の放送を録画して観るようになって12年ほどの間に、水の映像がさらにきれいになったという印象があります。


競泳の映像の記憶として、2000年の福岡世界水泳の時に屋内プールでの映像の美しさに驚きました。
それまで関心がほとんどなかった競泳ですが、高校生の頃、1970年代半ばに偶然、日本選手権の放送を観た記憶が残っています。
屋外プールでの大会の様子が少しだけ記憶にあるのですが、不思議なことに当時も当然カラーテレビで観ていたはずの映像なのに、記憶の中では白黒に近い印象で残っています。


なんでだろうと考えてみたのですが、もしかしたら水面に反射する光と水しぶきが黒(灰色)と白のコントラストで印象に残っているのかもしれません。


高校生の頃に観た映像は、泳ぐ選手と平行して陸上からカメラが泳ぎをとらえていたものでしたが、最近ではさまざまなアングルからの映像が編集されながら、選手の泳ぎがより立体的に映し出される感じでしょうか。


昔の競泳の映像はどんな感じだったのだろうと興味がでて、検索してみました。
中日映画社のサイトに、1960代の競泳大会の映像がありました。
たとえば、「女子100バタに世界新ー第3回日本室内水上選手権」は1961年に行われたもので、「豪の招待選手アンドリューが女子バタフライで世界新樹立」とありますから、現在のジャパン・オープンのような感じだったのでしょうか。


会場は「東京屋内プール」で、現在の東京体育館だと思うのですが、当時はこんなガラス張りのプールだったのですね。


これぐらい採光を考えないと、屋内が暗くなってしまう当時の照明事情でしょうか。
ただ、外からの光が明るすぎで水面が光ってしまうことと、逆光で選手の顔も見えにくいですね。



そしてカメラの位置は、やや高いところからコースに平行に映して行くカメラと、ゴール側からの2台のようです。


むしろ1958年の「日本チーム三つの世界新」の屋外プールの方が水面の反射が少なくて、水中の動きがきれいに見えます。


そして東京体育館の屋内での映像も3年後の「日本新が続出ー室内水泳選手権」になると、同じ会場で同じカメラの位置でも、だいぶ光の反射が抑えられて選手の動きや表情がはっきりと見えるようになっています。



この1960年代前半ぐらいが、屋外から屋内プールでの映像技術に何か大きな変化の時代だったのでしょうか。



<水を映す技術>


日本選手権の会場で観ていると、現在では観客席側にコースと平行した映像を映すカメラとゴール側のカメラがそれぞれやや高い位置に設置されていて、さらに走行式というのでしょうか、カメラマンが乗った機器がプールサイドぎりぎりの位置で、選手の泳ぎに合わせて移動しています。
そしてセンターコースの水中の青いラインに沿って水中カメラが設置され、天井にもカメラがあります。


そして観客席にいると見えないのですが、スタートやターンを捉えるカメラがそれぞれ水中にあるのでしょう。


これだけのカメラを総動員して、水中と水上の映像を撮り、あの競泳のシーンができあがっていくのだと、いつも興味深く見ています。


そしてたとえば辰巳国際プールは、天井までガラス張りになった箇所があるのですが、競技中は厚いカーテンで遮光されています。
そして天井にはたくさんの大きな照明があるのですが、その中で光の反射を抑えて「青と白」のコントラストの映像をどうやって撮っているのだろうと、これもまた興味深く見ています。



同じ辰巳での大会でもNHKの映像の鮮明さは、素人ながらすごいと思っています。


NHK放送資料館」のサイトの「水中プリンプ」を見ると、水中撮影用のカメラケースができたのが1962年頃のようです。「ニュースや『自然のアルバム』などで活躍した」と書かれています。
競泳に水中映像が使われるようになったのはいつごろなのかはわかりませんが、このサイトでは1984年の「ベーターカム3管一体型カメラ用プリンプ」の説明にこう書かれていました。

VTRスタート/ストップ、ズーム、フォーカスなどの操作が陸上同様に水中でもできるほか、専用の水中ケーブルをつないで、他のカメラの映像も確認することができるようになっている。
高画質のロケ用カメラとして、「ウオッチング」「日本動物記」などに頻繁に使用された。北海道から沖縄まで全国3カ所の水中を結ぶ、多元中継NHK特集「日本列島夜の海」1984(昭和59)年
をはじめ、競泳などのスポーツ中継にも使用された。

<水の動きをとらえる>


こうして「水」を映像にしてきた歴史を垣間みてみると、あの1970年代の「白黒フィルム」に見えた日本選手権の映像の記憶もあながち間違いではなかったのかもしれないと思うほど、1980年ぐらいから急速に進化して来たのかもしれませんね。


そして、最近ではハイスピードカメラによって、水しぶきの一瞬までとらえた映像まで見ることができます。


競泳選手の体の周辺に飛び散る1滴1滴まで見ているとなんだか、「水ってこういうものなのか」と初めて見るかのような気分ですね。


競泳大会でも、待ち時間の間、選手の泳ぎが中央の大型スクリーンに映し出されるのですが、水中映像とか、スローモーションで動きや水の変化を捉えた映像はずっと見ていてもあきません。


オリンピックや世界水泳では、レースの映像の編集パターンはだいたい決まっている印象ですが、自分が見たい選手の泳ぎだけを選択してみられるとか、水中映像だけに切り替えてみられるとか自由に見られるようになったらいいなと夢のようなことを考えています。


でも、夢ではないかもしれませんね。



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