事実とは何か 14 <「子どもから見たお産と産後の母子の関わりについて〜バースハピネスから考える〜」>

私は一人で黙々と泳いだり一人でビール片手に海を眺めるのが目下、「しあわせ〜」と感じていますが、友人には「え〜、さびしい〜」と言われてしまいます。


そう、幸せなんて、人の数だけあるもの。


「こうすれば幸せになる」と価値観や思想を共有しようと他の人を巻き込むことは運動であり、あるいは宗教の形になっていくことかもしれません。



医療従事者の一人一人にも生老病死についての考え方があり、それを公表するのは自由だけれど、「それが正しい」と他の人に伝道したくなったら、もう一度踏みとどまって欲しいものです。
「産み方は生き方」とか母乳推進運動とか。



さて、こちらの記事で紹介した日本周産期・新生児医学会のワークショップと同じタイトルのランチョンセミナーが、今年4月に開かれた日本産科婦人科学会学術講演会でもあったようです。
トコちゃんベルトを販売している「青葉」のサイトで、「子どもから見たお産と産後の母子の関わりについて〜バースハピネスから考える〜の全文を読むことができます。


図表は引用できないのですが、文章を紹介してみようと思います。
長くなりますが、記録しておくために書き出してみようと思います。
(赤字強調部分は、「事実とは何か」私がひっかかった部分です)

1.母子医療センターでの経験


大阪府立母子保健総合医療センターにおける母子関係の変貌


 私は周産期及び小児期における疾患に関する専門研究機関である大阪府立母子保健総合医療センターで35年間勤務しているが、1980年代前半までは母子関係に大きな問題を感じることはなかった。しかし、1980年代も後半を迎えるとネグレクトと思われる家庭が見受けられるようになる。1989年には、当NICUで初めてDD双胎の男児が2歳で父親に虐待を受けるという事例が起こる。この御、1990年代に入ると、両親(特に男親)に幼さを感じることが増え始め、1996年には初めて虐待による死亡症例という悲しい経験をすることになった。


 この翌年、1997年同医療センターではカンガルーケアを導入することになった。2000年代と言えば、一般的には虐待事例が増加の一途をたどっていた頃である。一方同医療センターでは1997年以降深刻な虐待事例が見られておらず、このことからカンガルーケアと虐待は無視できない関係にあると考える


 日本の歴史上初めて、医療施設分娩がほとんどを占めるようになってから50年近くが経った。今30歳代の母親達を生んだ祖母たちは、この大きな変化を受けた最初の世代である。


 この頃の医療施設分娩のほとんどは医師と見知らぬ助産師による分娩台を用いたお産で完全母子異室制であった。


 このような環境でのお産とは、母親にとってどのような体験となるのだろうか。1998年頃、ある若い母親からこのような話を聞いた。


 3歳になる第一子(男児)は公立病院で出生。少し抱いた後すぐ預かり室に連れて行かれ、母親はガラス越しに眺めて帰室した。3時間ごとの授乳で、夜中にお乳が張って痛いので授乳しに行くと「授乳時間外に来ないで。お乳は冷やしなさい」と言われた。


 この母親は「母乳育児なのに、なぜかかわいくないのです。1歳になる下の子は助産院で出産しました。夫と上の子が傍にいて、お産直後には生まれて初めて体験する恍惚感に浸ることができました。下の子は食べてしまいたいくらいにかわいいのです。」と言うのである。


 一方で葛飾赤十字産院の竹内正人先生から聞いた話も興味深い。


 娘のお産に付き添って泣いていたおばあさんに話を聞くと、自分は辛いお産を経験したため、娘にはそうならないように見守っていたが、あまりにも素晴らしいお産だったので泣いてしまったのだと言う。2000年代に入って大阪の助産院分娩では、自然ないいお産をした娘を見て、自分の辛かったお産を思い出して泣く祖母が少なくないと聞く。


 また、この分娩後祖母と母の関係性が良くなったと言う。このことから、豊かなお産で親子共に癒されていることが考えられた。このように、お産の体験がどのようなものであるかが、出産した母親のみならず、広く家族関係に影響を及ぼすことがわかる

虐待発生には30年2世代が必要


 母親の辛いお産体験が虐待発生の一因であることは図1〜図3の関係から見て推察されるが、虐待の発生には、分娩の状態に加えて30年2世代という期間が見えてくる


 母親が辛いお産を経験したとする。祖父母からは応援されるものの、傷ついた誰にも打ち明けることができない。すると、子どもがかわいく思えない。そして子どもをかわいく思えない自分を責める気持ちも湧く。


 そういった中で育てられた子どもは、母親の辛さを感じながら育つことになる。そのため、親に十分甘えられず、自信を持てないまま成人することになる。その子どもがまた結婚し、妊娠・分娩、同様に辛いお産を経験する。ところが、施設分娩の祖父母はこの子どもをうまく応援することができない。結果として、子どもと2人きりの育児となり、更に傷つくことになる。


 この2世代に渡って続く、傷ついた母子関係が虐待の要因のひとつと考えられる。

自然なお産と豊かな出産体験、お産の本質とは?


 では「辛いお産」ではない「豊かなお産」とはどういったものだろうか。


 お産の本質とは、母親がリラックスできること、そしておきざりにされず常に寄り添われ、「自分は大切にされている」と母親自身が感じられることである。つまり母親が価値ある人間として尊重され、お産の流れに任せて自分のありのままを出すことができるときに「バースハピネス」が生まれるのである


 この素晴らしい出産の経験が母親に達成感と強い自己肯定感をもたらす。更にその母が子に「あなたがいることが嬉しい」と伝えることが子の自己肯定感(自我)を強くし、これらが共に社会を強くする


 こうしたお産を実現するためには、出産施設や助産師の担う役割は大きい。市川・鎌田らの出産体験尺度(CBE-scale)に基づいた調査によると、施設・助産師・ケア方法などによって母親の出産満足度に大きな差があることがわかる。 

2.カンガルーケアがもたらす効果


赤ちゃんは親、特に母のこころを感じ取る力が最も強い。そのため、出生直後から母親は自分を受け入れてくれる存在なのかを調べることができる。また欲しいときに目の前におっぱいがないという状況であっても誰が自分におっぱいを与えてくれるのかを正しく認識している。つまり赤ちゃんは観察力・理解力に優れた存在であるといえる。しかしその一方で自分のことは自分で行っているとも思っている。以上のことから出産後に母子で過ごす時間は重要なものであるといえよう。


 しかし発育状況によっては個々に環境を整えた保育器の中で厳重な体制をつくるNICUでの集中的な治療を必要とする新生児もいる。


 赤ちゃんにとってはNICUはどのような場所なのか、それを示すものとして2つの興味深い話を紹介したい。


NICUにおける超低出生体重児の記憶 その1


 1995年に4歳になった女の子が、母子センターに外来受診した。その子は24週で640gで馬r他。外来の大きな汽車の置物が大好きで、よく遊んでいた。「NICUへ赤ちゃんを見に行こう」と母が促すと、新生児棟の入り口で立ち止まって、動けなくなった。「この中には、悲しい辛い思い出があるから見るのはいや。緑色の光は大嫌い」と母親に言った。今は元気な23歳の女の子の話である。


NICUにおける超低出生体重児の記憶 その2


 2008年に3歳になった女の子が次の妊娠中でもある母親にした話。その女の子は23週618gで生まれ、人工呼吸器から出た31週に初めてカンガルーケアを受けた。その後退院まで頻回に受け、母子ともに気持ちがよかった。3歳になった今、「赤ちゃんはお腹の中だね。△△はうえ(胸)にいたんだからね、△△はここにいた。(と母の胸の間を触る)うえ(胸)だーいすき。ハコ(箱:保育器のこと)、いた。遺体の嫌なの。あれをつけるの嫌なの。ハコ嫌いなの。ママがいいの・・・」


 大阪府立母子保健総合医療センターでは、1997年よりカンガルーケアを導入している。カンガルーケアとは南米コロンビアで低出生体重児に対する保育器不足への対策として生まれたケア方法で、出生直後の赤ちゃんを母親の胸元で抱っこして、直接肌が触れ合うようにすることをいう。今では健康な母子の出産直後にもカンガルーケアを行うケースも増えている。


 また1988年にはカンガルーケアを行うことによってもたらされる効果を検証するため、カンガルーケア・プロジェクトを始動した。


 カンガルーケア・プロジェクトでは、低出生体重児(未熟児)の通常ケア群、カンガルーケア群と正期産児の3群に分けて、発語・発声や笑い(微笑み)、泣きについてその生起率を調査した。その結果、カンガルーケアによって肯定的な発語や笑い、微笑みの生起率は向上、泣きの生起率は低下していることがわかった。


 カンガルーケアは母親にとっても辛いお産から立ち直るためのきっかけになることが、母親の聞き取りからも読み取れる。ある母親は、カンガルーケアの感想を以下のように語った。


 「素肌との触れ合いの中で、とっても安らかな気持ちになります。護るべきものが出来たという実感を体で感じることが出来てうれしかったです。また、洋服を着ての触れ合いと、素肌同士の触れ合いの違いを、伝わってくるぬくもりを通して感じました。赤ちゃんと離れて2ヶ月近くも経つと、最初の頃よりも、徐々にお乳が出にくくなってきたのですが、カンガルーケアをした日には、お乳がたくさん出たので心よりも体の方が早く違いを感じていたのだと思います。それと抱っこだけより赤ちゃんを抱いているんだという実感が強く沸きました。」


 またこのことはその後の育児においても長期的に効果をもたらすことが考えられる。「早産児を生んでしまった」という辛いお産経験に傷つき、更にその後の児にとって数々の辛い状況をもたらす。そしてNICUで皆から優しくされた時間は癒しとなる。その結果、子どもへの共鳴・共感が可能になり、子育てへの自信が育つ。


 非カンガルーケア群とカンガルーケア群に分け、子どもが課題を達成した際の母親の反応を比べた。非カンガルーケア群の母親が課題を達成した子どもを黙って眺めているのに対して、カンガルーケア群の母親は子どもと共に喜ぶケースが多く見られた。


 また子どもの反応においてもカンガルーケア群の子どもが大きく笑いながら喜んでいるのに対し、非カンガルーケア群の子どもは笑いが少ないということがわかった。


 更にカンガルーケアがもたらす効果は辛い出産を経験した親子だけに止まらない。正期産児の分娩・子育て因子と1歳半の親子関係について、心理検査受診及びビデオ撮影を行った結果、出生児のカンガルーケアが1歳半時の母子関係を安定化させている様子が見られることからも、カンガルーケアは親子関係において良い結果を生み出すといえる

諸外国の周産期の母子ケアと虐待予防


 フィンランドにおいて、子ども達の行動や情緒面で問題が非常に少なく、しかも社会的能力が高い子ども達はどうして育つのか?


 この要因を探るべく、1981年から6,000人を対象に18年間の追跡調査を行った。その結果、子どもは「出産後すぐ」・「3ヶ月」・「3歳」・「4歳」の時点で幸せであったことがわかった。また、これには母親が出産後に幸せを感じていることが最も強く関係していた。


 それでは、ここでいう母親の幸せとはどこから来るのかー。


それは、赤ちゃんがいるだけでうれしい、つまり子どもと一緒にいると幸せになれると感じたときである。


このように感じるには以下の要素がフィンランドでは満たされていることが背景にある。
・夫婦・家族の関係が良好である
・世代を超えて若い母親が年上の女性にサポートを受けられるような関係が構築されている
・子どもと家族が安心できる、つまり人や環境、子どもにやさしい社会である


 また、図22で紹介した「心理検査受診及びビデオ撮影」の実験では、カンガルーケアの有無がもたらす効果に加えて、出生時の状況や母親の心理状態がもたらす効果についても検証している。 


 その結果、BFH・助産院で生まれたことや、出生時に母子同室であったこと、また妊娠中から母親の精神状態が良好であったことが1歳半時の赤ちゃんの啼泣率を低下させることがわかった。


 ロシアではサンクトペテルブルク11の施設で行われた実験を元に、授乳と母子同室、早期母子接触が乳児放棄の割合を減少させるものとして、既に産科施設に導入されている。


 スウエーデンでは20年以上前から家族出産が当たり前となっている。正常産の80%は助産師分娩で医師は介入せず、また、この助産師は同じ人物が1対1でケアを担当する。更に全国のバースセンターは全てBaby Freiendly Hospitalである。このスウエーデンの協力を得て、ロシアのサンクトペテルブルク市の出産施設11カ所が全て以下のような形で母子ケアを変革し、1993年から全ての施設がBFH(赤ちゃんにやさしい病院)となった。
1.母子異室→生後すぐから完全母子同室へ
2.預かり用の新生児室の閉鎖
3.哺乳:4時間ごと→母子に自由に任せる
4.分娩室の母親数:6.8名→ゆったり1名
5.産褥部屋の人数:6.8名→ゆったり1名
6.入院期間は7日間:不変(日本より長め)
7.夫や子どもの面会:不可→許可へ


このような対策を講じたところ、育児放棄率は大きく減少する結果となった


以上のことから母子の良好な関係性には授乳と母子同室、早期接触が大きく影響を及ぼしていることが証明された。

3. オキシトシンのお話(オキシトシンと母体の関係性)


 分娩時、母親は非常に感受性が鋭くなっており、全面的な情緒的サポートを必要としている。そのため、母親の全てを受け入れ、励ます存在が必要不可欠である。


 また、周囲の雰囲気を感じ取り、言葉に出さずとも全てを理解している赤ちゃんはさながら超能力者であるといえよう。


 分娩の進行には「オキシトシン」と呼ばれるホルモンが鍵を握っているといっても過言ではない。


 オキシトシンとは出産時の子宮収縮作用や乳の分泌促進作用を持つホルモンで、平常時の血中濃度は25.1μg/mlだが、出産後は47.1μg/mlにまで上がる例もある。


 しかし、この分泌量は精神状態に大きく左右される側面を持っており、母親が上記のような情緒サポートを受けられず、不安な時間を過ごしていた場合、オキシトシンの分泌量は低下してしまう。


 オキシトシンが十分に分泌されなかった場合、点滴からこれを注入する。内因性のオキシトシンが娩出前に眠気と気持ち良さをもたらし、娩出後子育てにのめりこませる働きを持つ反面、点滴から入れられたオキシトシンは脳内に入らず、陣痛を増強させる働きしか持たない


 また、内因性のオキシトシンには娩出後に恍惚感を残すという作用もあり、赤ちゃんが周囲の雰囲気を感じ取る力も持っているということも踏まえて、やはりお産においては内因性のオキシトシンの分泌が最も重要であるといえるだろう。


 では、どのようにして分泌を促すのか。
それは、不安や心配を除く環境づくりと心からの応援、そして「あなたのままでいいのよ」と受け入れることである。


 オキシトシンの分泌量については以下のことが分かっている。
・「授乳中に計算をする」と半減する
・「授乳中に騒音を聞かせられる」と半減する
・「不安になる」とほとんど出ない
・「授乳中に夫にけなされる」だけで授乳中分泌が半減する
・一方「夫に褒められる」とすぐに分泌が盛んになる


以上のことからも母親の精神状態がオキシトシンの分泌量に影響を及ぼしているといえる。

環境により遺伝子発現が変化するEpigenetic responseが証明されつつある


 様々な動物実験の中で、環境により遺伝子発現が変化するEpigenetic responseが証明されつつある。
1. 豚の妊娠期の脳下垂体にオキシトシンを投与すると、ACTH, beta-endorphin, LHとPRLの分泌が高まる。オキシトシンとCRHの作用でbeta-endorphinの分泌も亢進する。
2. 子育て熱心な雌ラットに育てられた仔では、海馬における糖質コルチコイドレセプターの発言が増加し、ストレスに強くなる。
3. さらに子育て熱心な雌ラットに子育て下手なラットの仔を里子に出すと、仔は子育てで熱心な親になる。


子育て熱心なラットに育てられた仔は、エストロゲンレセプターの発現が視床下部で増強していた。


 日本タッチケア協会の調査によるとマッサージを受けた低出生体重児は、マッサージを受けていないグループより、1日あたりの体重増加が平均で47%高いという結果が得られた。また、1ヶ月から6ヶ月の乳幼児に、タッチケアを何週間か続けることによって、ストレスの目安となる尿や唾液中のコルチゾールの量が減少することがわかった。


 ちなみにオキシトシンの生理的効果は多岐にわたっており、現段階では以下のことがわかっている。
細胞分裂・細胞の成長・体重増加などの発育促進効果
・赤ちゃんを子宮から押し出す、母乳を排出する
・脳内で働き、外への行動や社交性を助ける。好奇心を増し、不安軽減で他者との相互作用を求め、性的な活動や母性行動を促す
オキシトシンを投与することで長期の安らぎや不安の軽減をもたらす(抗ストレス効果)
また、現在は自閉症の治療にも使われている。

4. 子どもの育つ筋道


 辛いお産を経験した母親の子どもは周囲に甘えることができないということは先に述べたとおりである。甘えることができなかった子どもは自信が出産したあとの子育てにおいて混乱を起こす場合が多い。これを示すものとして、高知県中央児童相談所の澤田敬氏がまとめた、ある子育てサークルでの話をする。


 育児サークルの出席者66名に対してアンケート調査を実施した。そして自分の子どもに対して、愛情を持ちつつも、うるさく感じ、怒鳴る・叩く・つねるなどの行動をとる「子育て混乱」をおこしている6名(全体の9%)の子ども時代を確認した結果、6名とも子ども時代に甘え子育てをされていなかったことがわかった。


 では何故、甘えることができないのかー。


 これには「分娩によるPTSD」つまり「Birth Trauma」が大きく関係していることが考えられる。


 分娩によるPTSDとは分娩中や分娩後に、死の恐怖あるいは重篤な外傷性ショックを与えられた体験を指す。この体験が子どものトラウマとなり、その後の人格形成に大きく影響を及ぼすといわれている。母親の場合には、産後うつやマタニティブルー、そして分娩そのものによる成功体験の代わりに逆の心的外傷を負う。子どもの場合には、分娩そのものの外傷体験も大きな問題といわれている。


 内因性のオキシトシンは娩出前に鎮痛作用を持つエンドルフィンの放出を促す。母親がリラックスした状態でお産に望むとオキシトシンとエンドルフィンの分泌量が増加するため、お産がスムーズに進み、「Happy Birth」につながる。


 しかし、お産に対して不安が先行してしまうと母親はリラックスできないため、これらの物質の分泌量は少なくなってしまう。結果として辛い分娩になり、子どもの「Birth Trauma」につながるのである

5. 甘えとアタッチメント


 甘えとは、母子双方に生じる、温かさを核としたお互いの思い合いが育ちゆくことで形成される。母親の自分で生んだという自己肯定感を基にして、赤ちゃんが傍にいる幸せを感じる。それを赤ちゃんが感じて温かさを出し、その温かさを嬉しいと感じられる基調を作っていく。時間の経過と共に、その温かさを思い出すたびに、温かさも共に生じる。


 しかし、分娩が困難であった場合、その温かさを感じるゆとりが赤ちゃんからなくなり、落ち着くまでにかなりの時間がかかる。


 以上を踏まえて、我々医療従事者はただ医療行為のみを施すだけでなく、母子に寄り添い、不安を伴わない出産とは何かを模索しなければならないのではないだろうか。

6. おわりに


 先にも述べたとおり、2000年代に入ってから日本では痛ましい虐待事例が増えている。その背景には、社会問題だけでなく、現代の医療体制やお産時の状態も関係していることは否定できない


 我々医療従事者は一人でも多くの母親にとってお産が幸せなものになるよう、再度水からの役割を認識していく必要があるだろう。


 幸せなお産は世界を変える可能性を秘めていると結論づけ、以上を本発表のまとめとする。


赤字強調の多い紹介になりました。
赤字強調はあくまでも、私が「本当にそうなのか」と疑問に感じた部分です。


どやら「バースハピネス」とは「幸せなお産」と同義語であり、「バーストラウマ」とは対極的な概念のようです。


そして「バースハピネス」のためには、BFHあるいは助産院で出産し、内因性のオキシトシンによるリラックスした出産をして、早期母子接触、母子同室をし母乳分泌を増やすために、母親の全てを受け止め支えていくのが条件のように読めます。


そして「バースハピネス」をスタートとしたかしないかが、虐待にも関係するとのようです。


ところで、「南米コロンビアで始まったカンガルーケア」とどこを切っても金太郎のように出てくるその説明には、たしか、こちらの記事で紹介したように、WHOの「カンガルケアーの手引き」でも「常時、低出生体重児や早産児をどこでも抱っこし、保育器代わりに温めるためには父親や祖母が交替で『素肌と素肌』を密着させて温め続け」とあります。


「バースハピネス」では父親は何処に。
講演の冒頭でも「両親(特に男親)に幼さを感じることが増え始め」とあるのですが。




「事実とは何か」まとめはこちら