産後ケアとは何か 31 <産後うつ予防のための2週間健診について思うこと>

産後うつ予防のために産後2週間健診を開始するというニュースへの疑問を、こちらの記事で書きました。


全国の産後1か月健診がどのように行われているのか、全体的な統計を見たことがないのですが、私が働いて来た施設では、お母さんと赤ちゃんの1ヶ月健診は別の日ということがほとんどでした。


これは新生児の診察日をまとめたほうが、小児科の先生の診察時間を集約できることと、不特定多数の外来受診者がいる時よりも、1か月健診だけをまとめたほうが新生児への外来での感染のリスクをさげる、あたりが理由ではないかと思います。


お母さんも同じ日にそのまま健診ができればよいのですが、1回の1ヶ月健診で十数人から20人近くの方がいらっしゃいますから、新生児の健診をしてからお母さんの診察、そして相談に対応するとなると、どこかで通常の外来診療をストップしなければいけないほどの医師と看護スタッフ数も必要になりそうです。


たくさん相談ごとがあるお母さんや話を聞いて欲しいお母さんがいらっしゃるので、こちらがちょっと気になるお母さんがいてもなかなかゆっくり話を聞けずに、「何かあったら遠慮なく相談してね」「保健師さんに相談してみてね」「早めの新生児訪問を受けてみてね」と、地域全体で見守っていますよというあたりを伝えるだけで終わってしまうこともあります。



そのために、できるだけ入院中から気になるお母さんや授乳でフォローが必要なお母さんは、電話や直接来院してもらいながらフォローしています。


ただ、先日の記事のコメント欄で金木犀さんへの返信にも書いたように、産後のお母さんにとっては赤ちゃんを連れて外出することの心身への負担も配慮しなければなりませんし、なかには遠方の実家に帰られてフォローできないこともあります。


また、1か月健診までのこうしたフォローは、私が働いて来た施設では相談料をもらうことがなかったので、30分から1時間程かかる対応に看護スタッフが手をとられても、すべて施設側の持ち出しになります。


現状の産後のフォローや産後健診にはいろいろと問題があるのに、その問題さえ全体像が見えない状況です。
それなにに、産後2週間健診が増えたら業務量がさらに増すことになるので、実際にどうなるのだろうという不安がまずありました。


そしてかえって、業務量は増えるけれど肝心の本当に必要なお母さんにフォローをする時間がとれなくなったり、流れ作業的な健診で大事なことを見逃してしまうのではないかと。


suzanさんがコメントでこんな情報を教えてくださいました。ありがとうございます。

まだはっきりしたわけではないんですが、「産後うつ」の早期発見のための検診は精神科のある大きい病院で行い、少しでも疑いがあれば精神科にすぐに紹介できるようにするか、精神科と産科がある病院のない地域では精神科の病院をいくつか「産後うつ検診指定」として受診してもらうようにするらしいです。
「うつ」の診断はけっこう難しいですからね。
見逃してあとで自殺(子ども連れで)もあったら専門以外で検診した医者の責任問題になるので、専門家以外は手出しできないと思います。


なるほど、「健診」ではなく、「検診」のニュアンスなのですね。
もしかすると、退院時までに「検診を受けた方がよさそう」という方に紹介状を書き、その紹介受診は「産後うつ予防のための健診」として補助が出るという流れでしょうか。


いずれにしても、臨床で実際にお母さんたちにかかわる私たち看護スタッフにはどこからも明確な情報がこないのはいつも通り。
「周産期看護研究センター」として、こうした情報を一元化してくれると助かるのですけれど。





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