観察する 15 <ノブドウ>

先日のボタニカルアート展で、鳥肌が立ちそうなほど感動した展示がありました。


それがノブドウでした。


ノブドウは子供の頃に野生児で裏山を駆け遊んでいた頃、秋になると美しい実をつけていました。
今の生活圏ではほとんど見かけないので、懐かしいと思いながらその説明文を読みました。


秋になるときれいな紫や水色に色づくこれらの色が生じるのは、ブドウタマバエやブドウガリバチの幼虫が寄生する結果です。正常な色は白色ですが、あまり見かけることはありません。この宝石のように魅惑的な美しい色が虫こぶによって作られたとは、信じられない自然の妙です。

絵に描かれた紫色の実も実物を観ているような美しさでしたが、この色が何故どうやって作られるのか初めて知っただけでも、この展示に来た甲斐がありました。


冒頭でリンクしたWikipediaにも書かれていませんが、「松江の花図鑑」というサイトのノブドウ(野葡萄)に、説明と変化がわかる写真がありました。

落葉つる性木本
北海道〜沖縄の山野に生える。2分岐した巻きひげで他物にからみつく。茎は暗灰褐色で節の部分は膨らむ。茎は毎年枯れるが、基部は木質化して直径4cmほどになる。枝ははじめ粗い毛が密生するが、のちに無毛。円形の皮目が多い。巻きひげは各節からでる。葉は互生。 葉身は長さ8〜11cm、幅5〜9cmのほぼ円形で、3〜5裂する。裂片の先は尖り、縁には粗く浅い鋸歯がある。基部はハート形。雌しべは1個。果実はブドウタマバエやブドウタマバチの幼虫が寄生して、虫えいをつくることが多く、紫色や碧色などになる。正常な果実は少ない。種子は長さ3〜5mm。花期は7〜8月。冬芽は半円形の葉痕の奥に隠れて見えない。(樹に咲く花)
葉が深く切れ込むものをキレハノブドウとして区別されることもある。
学名は、Ampelopsis glandulosa var.heterophylla
ブドウ科ノブドウ


7月から11月にかけて変化していく写真を見ていると、普通は植物自体の色の変化だとしか思えません。


でも誰かが虫えいを発見し、色の変化に虫が関係したことを見つけた。
気が遠くなりました。


ところで、「虫えい」と打ち込んだものの「ムシエイ」だと思ったら、「チュウエイ」と読むようです。引用した説明文は日本語だけれど、一つ一つの言葉が専門用語であり、読み方からそのさらに深いところにある知識までが「専門性」なのですね。



こういう「生物の生態を観察し続けている人の生態」が気になっているのですが、虫こぶ(虫えい)を観察している方の本が出版されました。

フィールドの生物学ー21
「植物をたくみに操る虫たち ー 虫こぶ形成昆虫の魅力」
徳田 誠著、東海大学出版部、2016年11月30日

すごい偶然ですよね。
ボタニカルアートで虫こぶを知った直後に出版されたのですから。



あ、でも「客観的には神秘でも奇跡でもないものが、個人にとっては神秘にも奇跡にもなる」というひと言のおかげで、偶然の出会いに粛々と感謝してポチリました。







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