事実とは何か 22 <助産師の実践能力は低下しているのか?>

競泳の国内大会では、マスメディア的には注目されず知名度も低いけれど、いつも出場して上位に入賞し続けている選手もいます。
そういう選手が出場されると、思わず大きな拍手で声援をしています。


仕事をしながら練習の時間を調整し、上位に入りつづけることは並大抵のことではないことでしょう。
そして、選手自身の水の抵抗をなくすための技術の改革を求め続けていても、周囲の記録もまた更新されていくので、なかなか表彰台には届かないようです。


でも逆にみれば、こうした選手たちの努力があるからこそ、全体のレベルがあがるのではないかと思います。



<「助産師の実践能力の低下が懸念されている」?>



さて、いきなり競泳の話で始まりましたが、こちらの記事で紹介した、「2016年度版 助産実践能力習熟段階(クリニカルラダー)®レベル3 認証ハンドブック」に書かれている「周産期医療提供環境によって、助産師の実践能力の低下が懸念されている現在」の「能力の低下」とは何だろうと考えていた時に、こういうことを書く人たちとは違う見方もあるのではないかと思ったのです。


何をもって、あるいはいつと比べて「助産師の実践能力が低下」しているととらえているのか。
「実践能力」とは時代によって、どのような内容に変化したのか。


そのあたりをきちんと分けて考えないと、なんとなく「そうか、昔の助産師に比べて現在は能力が低いのか」という印象だけが伝わってしまいますし、当の助産師も「自分たちは不十分なのだ」と思い込まされてしまうことでしょう。


まあ、助産師の世界というのは粛々と臨床経験を積んでいる人たちのことを公の場でも腰砕けと貶め、「助産師だけですべて責任を担う」ことを目標にしている声が強い世界ですからね。


助産師の能力が低下しているのではなく、周産期医療の発達とともに助産師の担う業務がより専門化したこの30年ほどの変化にすぎないのだと思います。


80年代、90年代頃の新人助産師には求められていなかった周産期看護の知識や技術は、格段に増えています。
現在の20代の世代はそれを修得しなければいけないのですから、本当によく頑張っているのではないかと思います。



そういう歴史的な変化も認めずに「助産師の能力が低下した」と言う人たちは、臨床現場で実際に働いている人ではないだろうと思いますね。





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