水のあれこれ 54 <漏水>

子どもこの頃に読んだ漫画で、砂漠を描いた話がありました。
オアシスにしか水がなく、時々起こる砂嵐に飲み込まれて一晩で村がなくなるといった話でした。


初めて砂漠を見たのは、ソマリアへ向かう途中、中近東のどこかの国の上空の飛行機の窓からでした。
「もしここに不時着したら、生きては帰れないだろうな」とちょっと恐怖心が出て、景色を見るのをやめました。


ソマリアには国内には「四季を通して流れる川は二つしかない」ことを書きましたが、椎名誠氏の本でロプノールという消えた川の話を読み、世界中には私が思い描いている川とは違う状況が多様にあることを知ったのでした。


「川が消えることがある」
それまで住んでいた東南アジアの国では、水不足はありましたが川には滔々と水が流れていました。
川は山の方から水をたたえて流れ続け、海にまで到達するものだと思い込んでいました。


途中で地面に水が吸い込まれ、河床だけが残る。
それは「死」を連想させる話でした。


<漏水>


先日訪れた東京都水道歴史館に、「漏水」の展示がありました。


「漏水」と聞くと、「水道の水漏れ」「水道料金が使用量以上に高くなる」ぐらいしか考えたことがない自分が恥ずかしくなるほどはっとさせる音声ガイドが流れていました。
「明治の頃(だったと思いますが)は80%以上の漏水率であったものが、平成19年には3.3%にまでなった」というものです。


江戸時代から上水やその配水の技術が発達し、明治時代にはさらに近代水道へと発展して来ても、上流の水源から給水した水の8割が消えていたことになります。



その漏水発見技術として音聴法や相関法があることが、展示の中で説明されていました。


もう少しその漏水について知りたくて検索したら、東京都水道局のホームページに「東京の漏水の防止」という資料がありました。


東京都内で使用されている水道水は、主に首都圏を流れる利根川水系荒川水系および多摩川水系の河川水を水源としています。
これらの河川等から取り入れた水(原水)は、浄水場で沈殿、ろ過、消毒等の浄水処理をしたあと、圧力を加えて地中に埋設した管に送り、水道水としてお客様のもとへ供給しています。
この過程で、水道管から水が地上や地中に流れ出てしまうことがあります。これが「漏水」です。

2014(平成26)年には、漏水率はさらに3.1%になったとのことです。



<「漏水の現状」と「漏水防止の必要性」>



その資料に、漏水についてわかりやすく説明されています。

漏水の大部分は、給水管(お客様の管理)や配水管(東京都の管理)の経年劣化による亀裂、腐食等によって発生しています。平成26年度の漏水の修理件数は9,206件で、漏水の96%が給水管から、残りの4%が配水管から発生しています。

都内だけで年間9千件以上の修理が行われていると聞くだけでも、ちょっと気が遠くなりそうです。


漏水は、地上に流れ出す地上漏水と地表には現れずに地下で流れている地下漏水との2種類に大別できます。基本的に、地上漏水は即日対応による漏水修理(機動作業)により、地下漏水は計画的な漏水発見・修理(計画作業)により対応しています。

地上漏水は、人目に触れやすく発見されやすいのですが、地下漏水は、漏水の状況を直接目視によって確認することができないため、多くの場合、長時間地中で漏水しています。したがって、地下漏水を計画的に発見し修理しなければ、貴重な水は漏れ続け、道路陥没等により大きな事故につながることもあります。

「漏水の復元現象」とかそのデーター収集といあった専門的な話になると、もうちんぷんかんぷんですが、その資料の12ページからの「漏水調査方法」を読むと、技術や機材の進歩もすごいけれど、やはり人が地道に探さなければいけない部分もあるようです。


このように漏水防止対策は、新規水源開発に匹敵するほどの水量の漏水を防止できることにくわえ、二次災害の発生を防止することもできることから、東京都では、主要施策の一つと位置づけて積極的に取り組んでいます。

「都内に布設されている配水管の延長は、約2万7,000kmと地球2/3周に相当」というのですから、昼夜を問わず、その水の流れを監視してくださっている方たちのおかげで、渇水や断水の危機から守られているのですね。




東京都水道歴史館はこじんまりとした施設でしたが、とても勉強になりました。




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