境界線のあれこれ 74 <自宅と在宅と施設>

両親の「自宅」か「施設か」の判断をしなければいけなかった数年前は、まだ「自宅」はあくまでもそれまで生活をしていた家のことであり、「施設」というのはそれ以外のグループホーム介護施設のことだと認識していました。


ここ2年ほどでしょうか。
なんとなく「在宅」という言葉で、その境界線が微妙にずれて、グループホームやサービス付き高齢者住宅も「自宅」のニュアンスになってきたのは。


先日も、こんなニュースがありました。

自宅などで最後に地域差、看取り率最大13倍
最低は福岡県岡垣町の3.3%
読売新聞 2017年2月6日



病院ではなく自宅や老人ホームなど生活の場で亡くなる人の割合に、自治体間で大きな差があることが厚生労働省の調査でわかった。


2014年の全死亡者から事故や自殺などを除き、「看取り(みと)率」として計算したもので、人口20万人以上は約3倍、3万人以上20万人未満では13倍以上の開きがあった。背景に在宅医療・介護体制の違いがあるとみられ、「最後は自宅で」の望みがかなうかどうかは、住む場所によって決まる実態がうかがえる。


人口動態調査(14年)の全死亡例を基に、自宅ごとに病院や自宅など、どこで亡くなったかを分析。孤立死などを除外できなかったが、より看取りの実態に近い数値だという。


データーがしっかりしていた全国1504市区町村の集計では、病院の看取り率が78.8%、自宅や老人ホームなどでの「地域看取り率」は21.4%だった。12年度の内閣府調査で、最期を迎える場所に自宅や老人ホームなどを希望した人が6割を超えているのと比べると、希望と現実に違いがある。


市区町村別の地域看取り率をみると、人口20万人以上では神奈川県横須賀市が35.4%で最も高く、最も低い愛知県豊田市は11.6%だった。3万人以上20万人未満の最高は兵庫県豊岡市の43.5%、最低は福岡県岡垣町の3.3%。


横須賀市に316ある診療所が14年9月に行った訪問診療は4336件。これに対し、人口規模がほぼ同じ豊田市で、218の診療所が同時期に行った訪問診療は673件にとどまっている。研究班は看取り率の差の背景に、「往診を行う診療所の比率」など、在宅医療体制の違いがあるとみている。研究班メンバーで医療法人「アスムス」理事長の太田秀樹医師は、「自宅などで生活を続けた先に、穏やかな死を迎えられるよう、自治体は取り組んで欲しい」と話している。

へえー、「看取り率」とか「地域看取り率」という言葉があるのですね。


この記事のタイトルに「自宅など」とありますが、文中では「自宅や老人ホームなど」という意味のようです。
「自宅や老人ホームなど」というのは、私や両親にしたら「自宅と施設」の意味なので、この使われ方の差はどこからくるのだろうと、ここ最近のこの言葉の意味の変化にとまどっています。



もしかしたら、「在宅医療」を押し進めている側の方たちの感覚なのかもしれませんね。
たしかに、グループホームや老人ホームに往診をしますから、在宅医療にとってはそういう施設も「自宅など」になるのでしょうか。


でも、普通に自宅で生活をして来た人にとっては、そういう所へ生活の場を移すことを「施設へ移る」と捉えるのではないかと思います。
この「地域看取り率」という言葉まで作る変化の背景には、何があるのでしょうか。




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