気持ちの問題 38 <菜の花事件>

「菜の花事件」、ネットで検索してもWikipediaを見ても載っていません。
私が勝手に作った「事件」です。


2月中休園だった水族園が開館したので、葛西臨海公園に行きました。
水族園に入る前、いつものお気に入りの場所で海をしばらくぼーっと見ていました。
広場には、季節ごとの花が植えられている場所があります。
今は菜の花が満開でした。


菜の花の鮮やかな黄色と葉の緑色、そして海と快晴の空の青さは本当に良く似合いますね。
なんと美しい色が、地球にはあるのだろう。
感激もまた壮大です。


と、その時、60代か70代ぐらいの男性が、ロープを超えて菜の花の植え込みに入りました。
何かを摘んでいます。
最初は、職員の方が手入れをしているのかと思って見ていました。
でもあまり菜の花を気にしている歩き方ではなく、ズンズンと踏み込んでは何かを引きちぎっています。
そのうちに、同じくらいの世代の女性が来て、その男性に何か話しかけました。
もしかしたら、「勝手に入ってはいけない」と注意したのかなと思って見ていると、こんどはその女性までロープをくぐって入って行きました。


そして手には、若い菜の花のつぼみの部分がありました。


しばらくして、二人は満杯になったビニール袋を持って、一緒に同じ方向へと去って行きました。



さらに、こんどは別のやはり同じくらいの年代の男性が自転車でやってきて、バッグから虫取り網を取り出して、菜の花の植え込みに入りました。


菜の花を気にする様子もなく、そして近くでその菜の花の風景を見ている私もまるで視界にないかのように、そのロープで囲まれた中で何かを追いかけています。
パッと飛び立ったのは、一匹の蝶でした。
その蝶を捕まえるために、菜の花を踏みつけながらあわててロープの外へと出て行きました。


あのお二人は、その菜の花を調理して「おしいしい」と満足を感じるのだろうか。
もう一人の男性は、虫かごに入った蝶を見て、ただただ喜べるのだろうか。
菜の花を大切に育ててくださっていた方々は、どんなお気持ちになるのだろう。


人が大事にしていることにずかずかと入り込むために、人はどんな気持ちがおこるのだろう。


そして、私はこれからは菜の花を見ると、このことを思い出してなんだか胸の奥がズキンとするのだろうな。
見て見ぬ振りをしてしまったことに。
だから、私にとって「菜の花事件」。



人の気持ちって何だろう。




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