トップスイマーのように泳ぐことを全身で理解できている河童族の最高位の人たちにも、水に入ると絶対に泣いていた頃があったことを私は知っています。
まあ、どこの病院の沐浴槽も新生児にしたら水深2mぐらいの感覚ですからね。
面白いのは、女の子は生後2〜3日もすると気持ちよさそうに、まったりと沐浴槽で手足を伸ばしています。
男の子たちのほうが、生後数日でもまだ沐浴の時に激しく啼くのはどうしてだろうと思います。
ところが、いつのまにか泳げるようになり、そのびびっていた男の子たちのほうがプールや、あるいは川や海に飛び込む遊びを喜んだりするのですから、いつ、どのあたりから出来なかったことができるようになっていくのでしょうか。
そして出来なかった時期や、怖がっていた時期のことを忘れていく。
この感覚は仕事でも同じだと、最近しみじみと思っています。
<新人の頃を思い出せない>
看護職として30数年働いてきて、「新人」を2回経験しました。
最初は看護師として働き始めましたから、病院内での仕事も一から覚えていくので全くの新人でした。
数年後に助産師になって働き始めた時には、助産師としては新人ですが、看護師としては中堅以上の経験がありましたから要領よく仕事を覚えることができたので、全くの「新人」とも違っていたのかもしれません。
産科診療所の特に小規模な施設のスタッフは、ほとんどが総合病院などの勤務経験があるスタッフです。
新しく入職して来た人へのオリエンテーションも、その施設のマニュアルを覚えてもらえれば1〜2ヶ月もすれば、かなり動けるようになる人たちです。
たまに卒後1〜2年という「新人」レベルのスタッフが入ると、オリエンテーションも戸惑うことがあります。
「このくらいの経験年数だと何がわからないのか、何ができないのか」
そのあたり、けっこう私自身も忘れているのです。
中堅レベル以上のスタッフに求めるような動きを、つい求めてしまうことがあります。
幸いなことに、私の新人経験は大きな挫折を経験しなくてすみ、充実感の思い出だけが残っています。
でも、本当は医療という生命に直結する仕事が怖くて、かなり緊張していたのだろうと思い返しています。
少しずつその怖さを乗り越えた自信と引き換えに、その当時の出来なかった頃の記憶が薄れていくのかもしれません。
もやしっこからふとそんなことを思いつきました。
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