観察する 32 <動かない動物>

久しぶりに動物園に行ったことがきっかけで、葛西水族園と同じく上野動物園にも通っています。
最初は年間パスポートって誰が買うのだろう、動物園とか水族館なんて一生にそう何回も行かなくても十分なのではないかと思っていたのですが、今はわかります。


ホント、何度でも行きたくなります。
何をしに?
それは人それぞれの好みで良いと思いますが、私は気になった動物の動きを観察したいというあたりです。


動物園や水族館というと、活発に動く動物がいるようなイメージがあったのですが、案外、動かない動物がいるのでそちらが気になっています。
ハシビロコウとかマンボウとか。


先日も、以前は素通りしていたマレーガビアルに目が止まりました。


2匹のマレーガビアルがいるのですが、微動だにしません。
今まで、飼育されているワニを何度か見た記憶がありますし、ワニの映像でも動きが俊敏でちょっと凶暴なイメージがあります。


2匹のマレーガビアルのうち1匹は陸上に、1匹は体半分が水中にあるような状態でした。
ピクリとも動きません。
10分ほど、目を凝らして見ていたのですが、1匹の方の目がかすかに動いただけでした。
ハシビロコウ以上に、動かないことが印象的です。


体を動かさないのはおそらく捕食のためだろうと素人ながらにわかるのですが、驚いたのは、体のどの部分からも動きが感じられないことです。
体を動かさなくても心臓は動いているはずですし、呼吸もしているはずです。
動物ですからね。


ところが水中に潜んでいるマレーガビアルの周囲に、まったく水紋がないのです。
心臓の近くの水に鼓動が伝わって、少しは水の表面に何か動きがあるのではないかとずっと見ていましたが、水面さえも動きません。


こちらの集中力が途切れる頃に、陸上にいた1匹の頭がゆっくりと動いて、「本当に生きているワニ」であることが確認できたくらい、生きているのかさえわからない状態でじっとしているのでした。


ワニのこともほとんど知らなかったと思い、家に帰ってから少し検索してみましたが、科学技術振興機構の「Science Window」というサイトの「熱川バナナワニ園」にワニの動きについて書かれた箇所がありました。

園内には、透明がアクリル板でできたドーム型の天井から太陽の光が降り注ぐ。ワニたちは種類ごと、体の大きさごとに分けられたスペースで、ある者は池の中に身を沈め、ある者は地面に横たわっている。そのどれもが、じっとしたままほとんど動かない。いったいなぜ?

「ワニは水を飲みに来た動物を待ち伏せして襲う習性があります。それには、相手に気配を悟られないことが大切。そのせいで、普段から無駄に動かないのではないでしょうか」と後藤さん。「もちろん、獲物を襲うときは素早く動きます。体の半分近い長さがあるしっぽを使って、水中から多角ジャンプもできる。でも、もともと運動量が少ないから、エサを週に1回、冬は2週間に1回だけ与えればいいんです」


「相手に気配を悟られない」ために、心臓や呼吸の動きまで伝わりにくくできるのはどうしてでしょうか。
ああ、また小学生のような宿題ができてしまいました。
次回はマレーガビアルの前で1時間、ハシビロコウの前で1時間ぐらい、じっと観察するためにこちらも忍耐力が必要そうです。



それにしても、筋力維持が大変な人間と違って、じっとしていても「尾の力を利用して水面上に垂直に後ろ足を水面に出すまで飛び上がることもできる」(Wikipedia、「ワニ」)ような筋力と俊敏性を維持できるなんて、うらやましい限りですね。




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