水のあれこれ 61 <水草>

神代植物公園の大温室には大きな水槽があって、たくさんの種類のスイレンが花を咲かせていました。
また、外にはこれまたたくさんの蓮の花が育てられていました。


実物を見比べて、初めて蓮とスイレンの違いがいろいろとわかりました。
水中に根の部分があるのは同じなのですが、蓮の葉や花は葉柄で空気中まで持ち上げられているのに対して、スイレンは葉も花も水の上に浮いていることが大きな違いでした。
植物に関心があるかたなら初歩的なレベルの話かもしれませんが、恥ずかしながら、私は今年初めてそれを知りました。


とても不思議だったのが、これから大きく開こうとしている葉やつぼみが水中で育っていることでした。
根腐れしないのだろうか」「なぜ水中で溶けたり腐ったりせずに育つのだろう」
ポトスのような比較的育てやすい観葉植物もダメにする私の原因はどうやら水のあげすぎなのですが、水の中で育つ植物はその点何が違うのでしょうか?


水の中でも育つ植物は、子どものころから身近にたくさんありました。
代表的なものはなんと言ってもですし、川沿いを散歩すればいたるところに湿地があって、草が生えています。
また、水元公園の小合溜も夏になると表面が水草に覆われていました。
東南アジアで暮らしていた時には、海辺にマングローブがありました。


でも、なぜ水の中でも植物が生きられるのかについては、深く考えたこともありませんでした。
ということで、まずはWikipedia水草を読んでみました。
水草(みずくさ、すいそう)とは、高等植物でありながら、二次的に水中生活をするようになったものを指す総称である」とありますが、高等植物という言葉を見たのは高校の生物の授業以来ではないかと思うほどあいまいな知識です。


そのあたり、「水草の特徴」にもう少し詳しく書かれていました。

高等植物は、本来は陸上生活に適応して進化したものなので、水中で生活する植物はそれほど多くない。この点ではコケ植物も同様である。水中生活をするものの中でも、たいていは淡水産のもので、海産のものは、さらに少ない。海産のものは、特に海草(かいそう、海藻ではない)と呼ばれる。

どの程度水中にあるかによって、分類されているようです。

水中生活と言っても、完全に水中だけで生活するものは多くない。根元が水中に浸っているだけのものを湿地植物または湿生植物、根が完全に水面下にあり、茎や葉が水中から水面上に伸びるものを抽水性植物(抽水植物)、葉が水面に浮かんで、その表面が空気中に触れているものを浮葉性(または浮葉植物)という。植物体が、完全に水中にあるものを沈水性植物と言い、狭い意味ではこれを水草という場合もある。しかし、沈水生植物であっても、花は空気中で咲かせるものが多い。また、条件次第で空気中に葉を出すものもある。

なるほど、不忍池でビールを飲みながらぼーっと蓮をながめていた時間も決して無駄ではなかったと思うほど、この分類がすんなりと頭に入ってきました。



さて、水の中でなぜ生きられる植物があるのか。そんなことも書かれていました。

水中では、水不足とはほとんど無縁でいられるので、乾燥への対応を迫られることの多い陸上に比べ、その点では楽である。また、浮力があるのでカラダを支える必要もないため、水草の体は軟弱であるものが多い。また、乾燥した陸上に比べて急激な温度変化が少ない。他方、酸素と二酸化炭素の供給には恵まれない。特に、維管束植物では非同化組織が多く、酸素を供給してやらなければならない。そのため、茎の中は空気が通れるようになっているものも多い。レンコンの穴はその例である。種類によっては呼吸根といって、根の一部が地下から地上に伸び、水中や水面に顔を出す。また、水は光をよく吸収するので、水中は陸上に比べ、はるかに光合成量が稼げない。したがって、多くの水中植物はできるだけ水面に顔を出すような適応をしている。水面に出た葉は水を被らないよう、表面に水を弾く仕組みがある。また、葉や茎に浮き袋を形成して水面に浮くようになっているものもある。

なるほど!あの蓮の葉の「ロータス効果」もそういうことだったのですね。
植物の適応の変化もすごいし、それを観察している人たちが積み重ねて来た知識もすごいですね。


もう少し蓮とスイレンの違いを知りたくなって、書店に出かけてみました。
残念ながら蓮とスイレンの図鑑のような本はなかったのですが、今年の夏の課題図書を見つけました。


「異端の植物 『水草』を科学する 水草はなぜ水中を生きるのか?」
田中法生著、2012年8月、ベレ出版

水草はどんな草? ーそれは今ー」
浜島繁隆著、2017年3月、トンボ出版

うだるような暑い毎日ですが、気分は水に漂った草になったつもりで読んでみようと思います。




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