水のあれこれ 62  <プールでの水難事故>

子どもたちが夏休みに入って、プールもにぎやかです。
黙々とコースを泳いでいる大人とは違い、水の中で飛び跳ねたり潜ったり、元気に遊んでいる子どもたちの動きというのは、なんだか不思議な世界です。


でも先日も、プールの底に沈んでいるのを発見された小学生の傷ましいニュースがありました。
監視員さんだけでなく、私も子どもが増える時間は少し緊張して、泳ぎながらも水中を観察しています。


今まではプールの事故というと、まず「子ども」という認識でしたが、最近は中高年スイマーが増えたので、「あんな泳ぎ方をしていたら心臓麻痺を起こすのではないか」とハラハラしています。


私も30代で泳ぎ始めた頃は、速く泳ぐために6ビートのキックをしていました。
だんだんとストリームラインを意識するようになると、ほとんどキックをしなくてもスピードが出るようになったことと、キックを減らせば心拍数を無駄にあげることがないので、有酸素運動でもそこそこスピードを出せて、さらに長く泳ぎ続けることができることが実感として理解できるようになりました。


ところが、ニモ(子ども)たちの水泳教室だけでなく、中高年を対象にした水泳教室でもバタ足のキックを基本としている印象があります。


その教室で泳ぎ方が少し上達すると、他の人に挑みたくなるのだろうと思います。
あ、このあたりはあくまでも相手の気持ちをなんとな〜く感じ取ったというレベルの話なのですが、私が泳いでいると激しくキックをして追い越そうとする中高年女性がけっこういます。
たぶんゆるゆる泳いでいると、「ゆっくり」に見えるのだと思います。
ところが、ゆるゆる泳いでいても私の方が断然速いので、さらにキックをして追い越そうとするのです。


「あ、危ないな」と感じて、そういう場合には、私はスピードを落として、相手に追い越させるようにしています。


また、私は、普段はほとんど人を追い越すことはしないようにしています。
追い越されそうになると、がむしゃらに泳ぎ始める人が多いのがこの年代です。
プールでは「相手に挑ませない」、そして自分も「相手に挑まない」に徹するようにしています。


意図せずして相手を煽り、がむしゃらに泳がせる状況を作ってしまうことで、いつ同じプールで心臓麻痺を起こす中高年スイマーがでるのではないかとヒヤヒヤしているからです。


毎日新聞「医療プレミアム」の「救助が必要な人は『静かに』溺れている」(2017年7月14日)という記事がとても参考になりました。


「集団で一斉に泳ぐ大会は、蹴り足に注意」では、スタート時に「前の選手のキックが自分の胸を直撃した」ことで意識を失い、あやうく溺れるところでライフセーバーに救助された話が書かれています。
子どもたちがプール内でふざけてもみ合っている時にも、同様のことは起こりそうですね。



また、中高年スイマーの事故も杞憂ではないことが、以下の部分からわかりました。

 また、スピードを上げて泳ぎすぎ、心臓に過剰な負担がかかって、危険な状態に陥る例があります。ある大会で、高齢女性が25m平泳ぎのレースを終え、隣りのプールでクールダウンを始めてまもなく、狭心症を起こしました。近くにいた人が大声で私を呼び、3人がかりで引き上げました。心停止を確認してAEDを使い、救急隊到着後、強心剤の点滴、気管挿管での人工呼吸を行って、救命救急センターに搬送。心筋梗塞(こうそく)として治療を引き継ぎ、無事命は取り留めました。

 レースで頑張りすぎたことが心筋梗塞の原因だったのかもしれません。同様の事故はプールでの短距離レースで起きやすく、レース後いつ心停止が起きるかわからないので、怖い病態です。


中高年でレースに挑戦することも止める必要はないかもしれませんが、通常の水泳教室では速く泳ぐための無酸素運動的な泳ぎ方ではないものにしたほうが良いのではないかと、ハラハラしながら見ています。


自分に挑戦するのはいくつになっても可能だけれど、他人に挑戦するのはそろそろやめた方がよいお年頃だと思いますね。





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