正しさより正確性を 7 <おにぎりの安全性>

食品衛生への意識について、社会に知識が浸透するための時間差のようなものがあるのだろうなと感じたのは、doramaoさんの「おにぎりは素手でにぎるのが一番?」(YAHOO!JAPNニュース、2017年8月31日)の記事がきっかけでした。


<おにぎりの回想あれこれ>


私はおにぎりが好きです。
2個ぐらい食べると「あ、一日の塩分の3分の2ぐらい摂取してしまったかな」と気になりながらも、おいしさに負けてしまいますね。


子どもの頃から遠足や行事でも身近なおにぎりですが、塩をたっぷりつけたり、梅干しを入れれば腐りにくくなると思い込んでいたのは、どこから仕入れた情報だったのだろうと思い返してみるのですがよくわかりません。


子どもの頃は、むしろおにぎりというのは食中毒とは無関係の食べ物のイメージでした。


1980年代終わりごろだったと記憶しているのですが、知人がおもしろいおにぎりを作ってくれました。
サランラップを広げて、そのうえに海苔を1枚そのまま置きます。
ご飯を載せて具を真ん中に置いて、そのまま四方からサランラップごと海苔とご飯をぎゅっと寄せてできあがり。
見た目は四角で、形もきれいとは言えないのですが、「ああ、なるほどこの手があったか」と思いました。
最近、「おにぎらず」を時々耳にするのですが、さかのぼって行くと80年代あたりからジワジワと浸透したのかもしれません。


ただ当時は、直接ご飯に手の雑菌がつかないこという衛生的なことよりも、サランラップも海苔も贅沢品ではなくなったからこその握り方だと印象に残りました。


90年代ごろは、まだ駅前の商店街にはどこでも「伊勢屋さん」といって、おにぎりや海苔巻き、お団子などを売るお店がありましたから、ちょくちょく購入していました。
当時は、院内感染標準予防対策の広がりで医療機関では使い捨て手袋が浸透し始めましたが、飲食業の人たちにはまだ広がってはいない印象でした。
私も仕事中は手指の雑菌を意識していましたが、仕事を離れると「まあ大丈夫だろう」ぐらいでしたし、おにぎりや餅つきでの食中毒というのも耳にすることがありませんでした。


90年代以降、手指の雑菌を写真などで見る機会も多くなり、おにぎりも衛生管理がきちんとされていそうな商品を選ぶようになりました。
素手で握って売ったり、あるいは知人でも素手で握ったものなら、やんわりとご遠慮させていただきます。


<「素手のほうがおいしい」という正しさではなく正確性を>


doramaoさんの記事のまとめには、以下のようにポイントがまとめられていました。

素手でおにぎりを握ると美味しく感じるのはおそらく心理的な効果です
・手の旨み成分や微生物でおにぎりを安全に美味しくするのは困難でしょう
・おにぎりの食中毒の多くは黄色ブドウ球菌の毒素によるものです
黄色ブドウ球菌の毒素は熱に強いので、一度できたら殺菌しても食中毒は防げません
・おにぎりの食中毒は気温が高いほど起こりやすいです
・おにぎりは手袋やラップを使い、素手にふれないようにつくりましょう
・できあがったらラップや衛生的な容器で保護し、他の食品が触れないようにしましょう
・おにぎりはすぐに冷まして、低温のまま保管しましょう
・すぐに食べる場合には素手でもOK・・・でも、小児や高齢者に与えるときには注意が必要


とてもわかりやすく、参考になるポイントがまとめられていると思います。
ところが、こういう基本的な知識がひろがったり、聞いても本当に理解することが難しいのは何故なのか。
そのあたりに、「いい加減な話」が広がる理由とつながる何かがあるのかもしれませんね。




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