事実とは何か 49 <自分の中の災害史を正確な年表にする>

先週、ふらりと立寄ったいつもの書店の地図コーナーで、「こんな本が欲しかった!」と思う本と出会いました。


「なるほど地図帳 日本の自然災害危機の対策」
 昭文社
昭文社トップページのコラム一覧の中に紹介があります)


発行年をみると2014年ですから、毎月のようにその書棚をみていたはずなのに4年近くも気づかなかったのですね。


最近の義務教育では、どこまで災害について教わっているのかわかりませんが、私が小学生の頃は社会科の教科書に地震や火山の噴火、台風などの絵とともに「日本にいるとこんな災害の可能性がある」「災害が起きた時にはどう行動するか」を少し教わった記憶があります。


小学生の頃に引っ越した地域には、「近い将来噴火する」と言われていた火山があったためか、今でも噴火に対しては常に緊迫感のようなものがあるのですが、多種多様な自然災害が起こりうる日本に住んでいながら、案外のんきに暮らしていました。


<大災害が比較的少ない時代に育ったのかもしれない>


この本を読んで、もしかしたら私が生まれた1960年代から80年代ぐらいまでは、比較的大きな災害が少なかった時代だったのではないかと、思い返しています。
「日本の史上最大の台風被害」で紹介したように、1959年の伊勢湾台風を境に水害が激減し、自然災害は地震や火山噴火が多くなっていった時代に私は生まれ育ったのでした。


たとえば、第1章は地震大国日本ならではの「地震」から書かれていますが、「日本で発生したおもな大地震」では、「福井地震、1948(昭和23)年6月」の次が「阪神・淡路大震災、1995(平成7)年1月」になっています。


幼少時からのあいまいな記憶でも、地震はしょっちゅうあったたのですが、「こんなことが起こるのか」とテレビの映像を前に呆然としたのが、30代の頃に発生した北海道南西沖地震(1993年)と阪神・淡路大震災の記憶でした。


「地震の年表(日本)」を見ると、1983年に日本海中部地震が起きて、日本海津波も発生し死者104人となっていますが、当時、新聞を読んでいたはずなのになぜか私の記憶からすっぽりと抜け落ちています。
そして毎年のように、行方不明者・死者が二十数人規模の地震があったようですが、どこか「他人事」のように受け止めていたのかもしれません。


それでも、比較的大きな自然災害が少なかった30年だったのかもしれません。


私が生活している地域では、むしろ2000年代ごろからゲリラ豪雨や洪水、竜巻といった異常気象が自然災害として新たな脅威になってきました。


<自分の中の災害史をより正確にする>


冒頭の本を手にとった時になぜ「出会った」と感じたかと言うと、ちょうど福井の大雪のニュースを聞いた日だったからでした。


ニュースの中で、五六豪雪が引き合いに出されていたのですが、1980年から1981年に起きたその豪雪の記憶が私には全くなかったことにショックを受けたのでした。
ちょうど私が看護学生の頃ですが、当時とっていた新聞には連日そのニュースが報じられていたと思うのですが、全く記憶にないのです。


災害のニュースは強い恐怖心や不安を喚起するものですから、自分自身の精神状態を追い詰めそうになることを避けて、無意識のうちに「他人事」として把握しようとしていたのかもしれません。


自分の中の年表という地図を正確に作り上げる必要があることを、福井の大雪のニュースから感じたのでした。




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