10年ひとむかし 32 <キャッシュカード>

今、当たり前に使っている銀行のキャッシュカードを初めて持ったのは1970年代終わりか1980年代初頭でした。


正確な年を思い出せないのですが、高校卒業後に初めて自分の銀行口座を持った時にはまだ都内の大手銀行でもキャッシュカードも現金自動支払い機(CD)もありませんでした。
大手銀行というのは、当時の富士銀行と第一勧銀でした。


ですから預金を引き落とす際には、その都度、用紙に記入して銀行の窓口で現金を受け取っていました。
それからしばらくして、たぶん高校卒業後2〜3年経った頃に、それらの銀行でもCDが設置されてキャッシュカードが導入されました。


そのあたりの記憶がけっこうはっきりある理由は、お金をおろすたびに銀行の椅子で小一時間は待たされていたことから解放されたからだと思います。
まだのんびりしていた時代ですね。
ただ、当時のCD機がどんな機械だったかははっきり覚えていません。
こちらの記事に書いたように、まだインターネット以前の時代でワープロさえもなかった頃ですから、初めてのコンピューターの内蔵された機械に戸惑ってもよさそうなものですが、やはり20代だっかたらでしょうか、難なく慣れて今に至っています。



キャッシュカードがいつから広がったのだろうと検索してみたのですが、たとえば「コトバンク」の「日本大百科全書(ニッポニカ)の解説」では「1969年(昭和44)にCDが設置されるとともにキャッシュカードの発行が始まった」とあります。
私の記憶とずいぶん時期がずれているのですが、おそらく一般的に広がるまでに10年ほどかかったのではないかと推測しています。


キャッシュカードを初めて持った時期についての記憶とともにあるのが、それからまもなく公共料金の口座自動振替が始まったことです。


現金が窓口でしか出し入れできなかった頃、公共料金の支払いのために長蛇の列ができていました。私は寮に入っていたので無縁だったのですが、卒業して自活するようになったら私も公共料金のために並ばなければいけないのかとちょっと憂鬱に感じながら眺めていました。
それでも、看護職なら夜勤があるので平日の時間内に銀行に行けますが、普通に働いている人たちはどうするのだろうと人ごとながら心配していました。


私が一人暮らしをするころには口座引き落としが可能になり、いい時代になったと安堵したのでした。


銀行のキャッシュカードだけでなく、クレジットカードも80年代初めには一般に広がりました。
そのほんの2〜3年前までは、クレジットカードを持つことができるのはそうとう社会的な信用がある人がアメックスを持てるぐらいだった記憶があります。


現金を持たなくても買物ができるのは便利で、さっそく使い始めました。
でも、つい服などを買ってしまうことに恐れをなして、いつからかクレジットカードは使わなくなり、ここ10年ほどでまた通販の決済にのみに使うようになりました。


今ではICカードをはじめさまざまなカードが身の回りにあふれていて便利だと思いながら、完全なキャッシュレスにはちょっと抵抗があるのは、あの銀行窓口に並んでいた記憶が私を何か引き止めているところがあるのかもしれないと思っています。


40年前の記憶になってしまったのですけれど。



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