存在する 15 <看護助手>

現在、医療機関で働く看護助手さんはどれくらいいるのだろう。
ずっと、気になっていました。


私が勤務する産科診療所にも看護助手さんがいて、なくてはならない存在です。
看護「助手」さんなんて呼称は不釣り合いなほど、院内全体のことを把握してくれています。


1980年代初頭に私が新卒で勤務した国立系の病院では、看護助手さんがいませんでした。
外科系病棟なので走り回る忙しさの中で、ベッドメイクから処置などに使う器具の準備から後片付けだけでなく、こちらの記事に書いたように配膳のたびに汁物をよそったり、清拭(せいしき、体を拭くこと)のためのタオルの洗濯まで看護職の業務でした。
卒後2年ぐらいたった頃に、その病院でも初めて看護助手を導入し、私たちも高度化する医療へと力を注げるようになったのでした。


その時に初めて「看護助手」という仕事を知り、時代の流れで新しく必要とされてできた業種だと思っていました。


ところが、それから2〜3年後に勤務した民間の病院では、各病棟や外来に当たり前のように看護助手さんたちがいました。
年齢も40代から60代ぐらいの「古参の」と形容できそうな方々で、私たち看護職の動きを見て、必要そうな物品がパッと準備されるというすごい人たちでした。
医療の知識を学んだ看護職でも、新人ならその状況にどのような物品の準備が必要かにまごつきそうです。


さらに、ていねいに確実に仕事をされる方がいると、本当に病棟内は整理整頓されて働きやすい環境になります。


医療機関というちょっと特殊な環境でこれだけ働ける人たちのほとんどが、それまで全く医療とは無関係だったことも驚きでした。
現場での実地訓練だけで仕事を覚え、医療機関にはなくてはならない存在なのに、時に「助手なんて」「助手の仕事なんて誰にでもできる」という扱いを受ける立場です。
そんなことないのに。
看護助手さんにも達人級の人がいるし、その人たちがいなかったら医療機関は崩壊しているだろうなと思うこともしばしばです。


ですからずっと気になっています。
日本に看護助手さんはどれくらいいて、どこでどのような働き方をしているのだろう。
給与や待遇はどうなのだろう。
看護職のような全国的な組織的があって、看護助手さんを守ってくれているのだろうか。
何があっても泣き寝入りの、看護の前近代的な時代のままなのではないだろうか。


「看護助手」という名称は、その仕事の実態を正確に表せているのだろうか。


本当に大きな存在なのですけれどね。




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