年齢を重ねるにつれて、「もし私が〇〇だったら」と違う職業を選択していた可能性を夢想することが増えました。
ところが、20代あるいは30代ごろまでの願いは叶う、野望も実現するかのような自分自身の前途洋々の将来を思い描く時期とは違って、世の中の仕事を知るたびに、むしろ私にはできないとその仕事の専門性への畏敬が強くなっています。
そのひとつに、学芸員があります。
その存在を意識したきっかけが、ブラタモリの番組であちこちの学芸員さんが登場されることだったと思い返しています。
本が好きだったので、通常の図書館だけでなく専門書を扱う図書館にも行っていたので司書さんは比較的身近な存在でしたが、動物園や水族園あるいは植物園とも無縁で、博物館もよほど関心のある展示でないと行くこともなかったので、10年ほど前までは学芸員さんの存在を知らなかったのでした。
最近、歴史資料館や郷土資料館にふらりと立ち寄ることが増えました。
散歩をしながら、「1950年代から60年代ごろの風景はどんな感じだったのか」とか「暗渠になった川はどのように流れていたのか、その周辺の生活はどんな感じだったのか」といった他愛もない素人の疑問なのですが、窓口の方にそれがわかる資料を尋ねるといくつか教えてくださいます。
この窓口の方も学芸員さんなのかなと思っていると、「もっと詳しい資料が必要なら学芸員を呼んできますが」と言われて、「いえいえ、そこまで専門的なことを知りたいわけではなくて、ちょっと気になっただけです」とこちらが焦ることがあります。
ある時、本当に学芸員さんが呼ばれてしまったこともありました。
「この辺りに△△用水があったと思うのですが、それがわかるような地図や写真を見たくて」と、しどろもどろに質問しました。
「あ、それはそこではなくて●●のあたりへと流れていて、この資料の中に写真が残っているくらいです」とあっさり、私の間違って覚えていた知識を訂正されたのでした。
私の小学生のような疑問にお時間をいただいたことに恐縮して、その資料館を後にしました。
学芸員は、博物館資料の収集、保管、展示および調査研究その他これと関連する事業についての専門的事項を司る(博物館法第4項)。一般に、学芸員が行う職務の類型は、研究・調査、収集・展示普及、保存・管理とされ、展示普及においては社会教育施設における教育従事者としての立場も含まれる。
(Wikipedia)
縁の下の力持ちといった感じで、地道に正確な知識を保ち続ける大切な仕事ですね。
物事についての関心があちこちへと薄く広がってしまう私には、とても無理だと思う仕事のひとつです。
「専門性とは」まとめはこちら。