事実とは何か  53 <高齢者と熱中症>

気象庁異例の警告が連日ニュースになっていますが、高齢者の熱中症での搬送や死亡のニュースも絶えることがありません。


年代的に「クーラーをつけっぱなしにするのはもったいない」とか「昔はクーラーなんて使わなかった」と言う方もいらっしゃるのかも知れませんが、他にも理由があるのだろうと思います。


10年前、父が自宅で熱中症になった時、当時70代前半だった母は、自宅にクーラーをつけました。
真夏でも30度を超える日は少ない高地ですが、締め切った室内では熱中症の危険性があることを身をもって体験したからだと思います。


その比較的涼しい地域でも、「今年は連日30度を超えて大変」と、先日、母のところへ面会に行く時に利用したタクシーの運転手さんがおっしゃっていました。
数分歩いただけでもどっと汗が噴き出す暑さでしたが、母は「みんな暑いっていうけれど、私は寒いの」と長袖2枚を着込んでいました。
施設内は確かに冷房が入っていますが、個室内は切ることができるので、母の居室は少し暑く感じました。


晩年の父も、大げさではなく、触ると手足が氷のように冷たくなっていつも寒がっていました。
そのためホールの冷房を切り、日がさんさんと入る窓際に座って面会しました。
「ああ、暖かくて気持ちがいい」と言う父の横で、私は汗がしたたり落ちる暑さです。


寒いと感じる人が冷房をつけたいと思うはずがないですし、服を着込み、布団を重ねて寝ているうちに、汗をかいたり熱がこもって脱水になって行くのでしょうか。
自宅よりは施設だと全体が涼しくなっていますから、母の居室の冷房を切っても熱中症になるほどでもなさそうですし、夜間も室温の見回りもしてくださっています。
その点、高齢者だけの世帯だと、暑さを感じていないことが問題の根底にあるのかも知れません。


「クーラーを適切に使う」の適切とはどうしたらよいのか。
高齢者の場合、クーラー使用の呼びかけだけでは解決しなさそうな難しさがありそうです。


高齢者の熱中症のニュースを耳にするたびに、その状況はどうだったのだろうと気になります。




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