数字のあれこれ 38 <パンダの体重減少率>

和歌山のアドベンチャーワールドでパンダの赤ちゃんが生まれたニュースがありました。

2018年8月14日(火)午後10:32、ジャイアントパンダの赤ちゃん(メス)が生まれました。わずか75gで生まれ、自力で母乳を吸うことができず、スタッフが懸命の授乳のサポートを行い、健康状態を見守っています。


シャンシャンはもう少し大きかったような記憶があるので確認したら、「子どもの体重はたった147g」とありました。
シャンシャンの半分ぐらいしか体重がないし、自力で母乳も飲めないとなると大丈夫なのだろうか、早産とか胎内での発育が悪かったのだろうかと、次のニュースを聞くのがちょっと怖かったのですが元気に育っているようで何よりです。


シャンシャンの時には、10日ごとに身体計測の様子が公開されていて、出生時は親の千分の1ぐらいしかなかった体がどんどんと大きくなっていくことに目を見張りました。
今回は、さらに出生時から連日の体重の変化を知ることができて、興味深くその数字を眺めています。


<パンダの体重減少>

8月16日
自力で母乳を飲むことが確認できました。64.4g。出生後、通常しばらく体重が減少します。


パンダにも、ヒトと同じ生理的体重減少があるのですね。
8月16日は日齢2日(生後2日)になるのですが、出生時体重から10.6g減って14.1%の減少率です。


実際には、夜の10時半に生まれているので1時間半ほどで日齢1日になっていますから、8月16日は何時に体重測定をしたのかはわかりませんが、午前中の早い時間に測定したのであれば、まだ生後30〜40時間ぐらいの可能性もあります。そう考えるとわずか2日にもならないくらいで、14%も体重が減ってしまうのですから驚きました。
ヒトならば、危険な状態です。


そしてさらに翌日は前日から0.5g減って、14.8%になっています。

8月17日
昨日よりもミルクを飲む量が増え、少しずつ体を支える力もつけてきています。63.9g

飲めるようになったからといって、すぐに体重が増えるわけでもないのはヒトと似ていますね。


そしてパンダの体重計は十分の一グラムまで測定できるものが必要なのですね。
ヒトの乳児の体重が1グラムまで測定するようになったのも、まだ半世紀にも満たない歴史なので、なんだかパンダの世界はすごいと感じてしまいました。


さて、この体重減少率14.8%が最低体重のようで、翌日からは体重増加期に入っていました。

8月18日 4日齢
スタッフによる懸命のサポートが続いています。状態が少しずつ安定してきています。保育器の中でも力強く動き、寝返りを頻繁にするようになってきました。68.5g

8月19日 5日齢
母親の乳房を探すようにタオルを吸ったり、寝返りをしたりするようになってきました。少しずつ自力でできることが増えてきました。72.2g


体重が増え始めてからは1日に5gペースで増えています。
5gなんて大したことがないように見えますが、出生時体重が75gであることを考えると、毎日出生時体重にたいして6%ずつ増えているわけですからすごい増えかたですね。
3000gで生まれたヒトの赤ちゃんなら、1日180gの勢いで増えていることになります。ちなみにヒトの場合は1日あたり20g〜30gぐらいです。時に1日100gぐらい増えることもありますが、毎日ではなく、ぐんと増える日もあれば横ばいの日もあって、1ヶ月で1kg前後の増加という感じです。


8月20日 6日齢
出生後しばらくして体重の減少が続きましたが、自力で母乳を飲み始めたこともあり徐々に体重が増加し、本日ようやく出生時を超えました。76.6g

生まれてからしばらく生理的体重減少があって、その後、出生時体重まで戻ると安心感が出てくるのはヒトも似ています。


そしてそのあたりからは、驚異的な体重増加期に入るようです。

8月21日 7日齢
目の周りや耳が黒くなり、少しずつ変化が見られてきました。手足の先には可愛い爪もしっかりと生えています。85.2g

8月22日 8日齢
母乳をよく飲むようになり、体重が昨日から10.8g増加しました。出生時15.5cmだった全長は18.0cmになりました。96.0g

8月23日 9日齢
本日で体重が100gを越えました!鳴き声にも力強さを感じられるようになってきました。103.0g。


出生時体重に戻ってからわずか3日で、生まれた時の体重の37%も増加しています。
すごいですね。ヒトの新生児なら3日で1kg増えた感じでしょうか。


写真ではあまりわからないのですが、だいぶふっくらしてきたのでしょうね。
ヒトと違って、全身の毛が増加している印象です。
体重が一度は出生時体重から減少してそして増えていくという一見単純な変化なのですが、体の中の何がどのように変化して母胎外への生活に適応しているのでしょうか。


出生直後というのは、本当に不思議な世界です。



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