咋日のニシアフリカコガタワニで紹介した東京ズーネットの記事の中に、興味深いことが書かれていました。
じつはニシアフリカコガタワニが属するクロコダイル科のワニの中には、卵を温めるときの温度で性別が決まる種が知られています。「温度性決定」というメカニズムです。ニシアフリカコガタワニがこのメカニズムをもつかどうかはまだわかっていませんが、温度を管理することでオスを孵すことができるかもしれないのです。
同じクロコダイル科のイリエワニは、30℃でメス、32℃でオスが生まれることがわかっています。また、孵化日数は、孵化時の温度が高いほど短くなるのですが、国内外の動物園で孵化したオスのニシアフリカコガタワニは、メスよりも早く孵化しています。つまり、オスはメスより高温で孵化する可能性があります。
ニシアフリカコガタワニの繁殖についてはこちらの記事で引用した文にあるように、自然界では巣を作っている植物の腐敗する時に発生する熱を利用しているそうです。
巣の中の温度も場所によって差があって、それがオスとメスの発生の違いに関係しているのでしょうか。
それにしても、ここまで観察されていることにも驚きです。
<ヤブツカツクリ>
先日、上野動物園に行く前にこの孵化の温度のことを知って印象に残っていたのですが、ニシアフリカコガタワニを見た後に立ち寄った鳥類のところで、こんな説明文が目に入りました。
ヤブツカツクリの塚作り
落ち葉や腐葉土を使って、直径4メートルの大きな塚を作ります。メスはその中に卵を生み、塚の中の熱を利用して孵化させます。
オスが塚に穴を開けたり、材料を足して温度を調節し、塚の中はいつも32℃〜35℃に保たれています。
ヤブツカツクリはオーストラリアに生息する鳥だそうです。
今まで、このケージの前を何度か通ったはずなのに、今回初めて目に入ったのでした。
東京ズーネットの「どうぶつ図鑑」の説明では、「オスが落ち葉を足て後ろに飛ばして集め、大きな塚を作る習性をもちます」「塚をつくるのに使われる落ち葉の総重量は4tにも達します」と書かれていますが、これだけでもちょっと驚きの生態です。
それにしても、「32℃〜35℃」をどうやってヤブツカツクリは感知するのでしょうか。
日頃、ヒトのバイタルサインをチェックしているためか、けっこう1秒間の感覚の正確さや温度などの感覚にも自信があります。
ただ、それは体温計や血圧計あるいは正確な時計といった体感を客観的にデーターにできる機器があるからです。
ヤブツカツクリは、どうやって孵化に適切な温度を知っていて、さらに孵化を失敗させないように温度管理をすることができるのでしょうか。
子どもの頃から、人間が動物の中で最も「高等な動物」という見方をいつの間にか身につけてきましたが、もしかしたらそれぞれの種の生活史は、ヒトが知り得ないほどわからないことだらけの中で、「自分たちだけが高等な動物」と思い込まざるを得なかっただけなのかもしれませんね。
かえったヒナは、親の助けをかりずに自分の力だけで穴を掘って家から出てきます。一週間も経たないうちに飛べるようになり、独立した生活を始めます。
(「どうぶつ図鑑」より)
ほんとうに世界はひろいですね。
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