伊豆長岡から沼津行きのバスに乗ると、狩野川放水路の海側を見ることができることに気づきました。温泉街のくねくねと曲がった坂道を登り海側へ出ると、放水側のトンネルが見えました。しばらくすると江浦湾が見えてきました。
残念ながら河口部分はバスからは見えませんでしたが、しばらく沿岸の風景を楽しみながら沼津に到着しました。
ここからはもうひとつ計画がありました。
*柿田川湧水群*
柿田川湧水群がある柿田川公園には、10年ほど前に両親と行ったことがあります。認知症になった父を母が家で世話をしていた時期で、時々母の運転でドライブに行っていました。
湧水が見られる場所までは、結構な下り坂の階段を昇り降りしなければならないのですが、あの頃はまだ両親もなんとか歩けていました。
久しぶりに階段を降りて見ると、散歩で鍛えている私でも脚がつりそうです。
もしかしたら、あの頃の両親は「もう二度と来ることができないだろう」という思いを秘めて、あちこちを回っていたのかもしれません。
そして、3人でソフトクリームを食べたのでした。
あの時は6月に入る頃で、緑が清流に映えていた記憶があります。今回は真冬でしたが、空の青さが水に反射してまた違った美しさでした。
こんこんと湧き上がる水を見ているだけでも、何時間でも過ごせそうな場所です。
かつては「排水のたれ流しにより水質が悪化し、魚も住めない状態になった」ことが信じられないくらいです。
きっとあちこちに、今、対応をすれば半世紀後、一世紀後に取り戻せる自然があることでしょう。
*市内の湧水を回って、楽寿園へ*
三島も何年か前に行ったことがあるのですが、駅の周辺には水路がたくさんあって街中に清流が流れていて、あの岡山の庭瀬に似たような雰囲気です。
いつか、ぐるりと歩いて見たいと思っていたのでした。
柿田川公園から三島駅に向かう途中に、地図で水色のかたまったような場所があります。パソコンの地図を最大に拡大しても何なのかわからないのですが、そこを通ってみようと決めていました。
近づくと低い場所から、水の流れる音がし始めました。
少し下ると、目の間には信じられないほど大きな水面が広がり、丸池という農業用水のため池でした。もう少し奥へ行くと、林の中に湿地が広がってあちこちから湧き水が湧き上がっていました。谷津あるいは谷戸という地形であることがわかりました。
こんな説明がありました。
境川・清住緑地には、昔、トンボの研究で世界的に有名な朝比奈正二郎博士の別邸があり、湿地・水田・湧水など豊かな自然環境に囲まれ、さまざまな動植物が住んでいました。しかし、住宅開発の拡大や洪水の発生により、次第に荒地が増えてしまいました。
そこで、静岡県では境川の洪水調整を行い、自然公園的な機能をあわせ持つ「遊水池」として整備するため、2000年から、地域住民・市民団体・行政との協働による住民参加の計画づくりを進めました。
その結果、緑地は昔の原風景と水辺自然環境を取り戻し、ハンノキの群落、約26種類のトンボ類、45種類の鳥類、トビゲラやイモリ等の水生生物が、年間を通して観察できるようになりました。現在、地元住民による愛護会も設立され、自主的な保全管理を行っています。
地図でたまたま見つけた水色の部分から、また世界が広がりました。
街中のいたるところから聞こえる水の音に、ああ、やっぱり私が惹かれたのは正解だったと満ち足りた気持ちで最後の目的地へ向かいました。
三島駅の真ん前に、こんもりとした森が広がっています。
それが楽寿園で、前回来た時には閉園時刻だったので、中に入れなかったのでした。
ここも明治から昭和初期まで資産家の別荘だったものが、市の公園になったものです。
ここも谷津の地形を生かして庭園や池があり、一歩中に入ると鬱蒼とした森になっています。
あまり湧き水の音は聞こえなかったのですが、目の前に広がる池を期待して降りたところ、なんと水が全くありません。最近、あちこちで行われているかいぼりの最中なのかと思ったら、こんな説明がありました。
小浜池
◎いつからこのような景色なの
昭和37年4月6日に水位が0cmを観測しました。それ以前は常に満水の状態でしたが、あれから50年になりますが、渇水した状況が1年のうち大半を占めています。
◎なぜ水がないのかな
昭和30年代中頃からの高度経済成長により、私たちのまわりの環境がとても変わりました。(人口増加・工場の増加・道路の舗装・河川工事・田んぼの減少・山林伐採など)さまざまな原因が重なり小浜池は現在の姿になりました。
◎いつ来れば湧水が見られるのかな
例年梅雨時から11月頃まで池に水が沸くことがあります。また、富士山の積雪や台風・梅雨時の雨が多いと水が湧き出ることがあります。近年では平成23年9月21日〜平成23年12月5日の間、7年ぶりに満水になりました。(150センチを超えると満水とご案内します。また、7〜8年に一度満水になるといわれています。)
もし、梅雨時に来ていたら、この立て看板の説明が目に入っていなかったかもしれません。
湧き水が豊かで、それ故の洪水もあった三島で、まさか渇水を経験するとは想像もしていなかったのでした。
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