食べるということ  35 あく

寒い日には煮込む料理の回数が増えますが、「偶然だろうか、それとも最近こういう傾向なのだろうか」と気になっていることがあります。

それは、食品のあくが少なくなったのではないかということです。

 

野菜や肉、魚を煮る料理では「あくを取ってください」とレシピに書かれています。

ところが、最近、待てども以前のような泡だったあくが浮かび上がってくることがあまりないのです。

お玉杓子を持って待ち構えているのですけれど。

 

肉や魚はさておいて、ほうれん草の赤い部分が少なくなったり野菜も変化しているので、あくが少なくなったという可能性もあるのでしょうか。

 

で、ちょっとヒヤリとしました。あくってなんだっけ?と。

灰汁(あく)とは、原義では灰(藁灰や木炭)を水に浸して上澄みをすくった液のこと(#灰汁)。この灰汁を使って食品自体が持つ強くてクセのある味を処理したことから、そのような嫌な味やクセそのものも「あく」と呼ぶようになった(#食品のアク)。

 

前者の灰汁は、子どもの頃にワラビやゼンマイを自宅で母が処理していたので、その様子がなんとなく記憶にあります。あの時の灰は、おそらく地元の農家から譲り受けたのではないかと思うのですが。

 

後者のアクは、植物性と動物性に分けて説明されていました。

植物性の食材である生物としての植物は多くの場合、草食動物の摂食を防ぐための防御物質として刺激性の物質や、栄養素の消化吸収を阻害する物質、摂食した動物の生理状態を変化させる生理活性物質などを持っていることが多い。こうした物質は人間の味覚や健康にとって好ましいと判断されれば香辛料やハーブ、生薬として却って積極的な利用の対象となるが、食材の味覚を妨げると判断されればアクとして調理時に除去の対象となる。 

 

肉や魚介類を煮た時のアクは、煮汁に溶け出した水溶性のタンパク質が熱変性によって凝固した、アミノ酸や脂質を含む泡状の浮遊物である。旨味成分や栄養学上有用な成分を含むが、料理の風味上強すぎると不快に感じる成分や、癖のある味・臭いを持つ様々な成分をも吸着しているため、見た目と臭い、舌触りがよくないなどの理由で取り除かれることが多い。一般にフランス料理などのスープを作る場合には、臭いや濁りを嫌ってアクは除去される。

 

しかしこうした食材の癖の強さは、料理の方法によっては却って食材の個性を強調する要素として良好な味覚をもたらす場合もあり、イタリア料理の一部などでは肉のアクをあえてソースに加えることもある。                  

 

ところによって、あるいは種類によってはアクにもなり風味にもなるということでしょうか。

そういえば、私が3年ほど暮らした東南アジアのある地域では、私があくをすくおうとすると驚かれました。説明しても、意味がよくわかってもらえなかった記憶があります。

その後、都市部や少数民族の人たちの村などあちこちで調理に参加させてもらったのですが、そういえばあくを取ることがありませんでした。

 

 

あくってなんだろう。

 

 

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