水のあれこれ 96 瀬切れ

東海道新幹線の車窓から見える川を瞬きを惜しんで眺めた中でも、絶対に見逃さないようにと思っていたのが安倍川です。

 

大井川や天竜川に並んで静岡県内では滔々と水が流れる大きな川に、水がなくなったというニュースが1月にありました。

安倍川下流で「瀬切れ」 少雨影響、監視強化 静岡
国土交通省静岡河川事務所は16日、静岡県静岡区の安倍川下流域で、河川の表流水が途切れる「瀬切れ」が発生したと発表した。2018年10月からの少雨に加え、今月に入り降雨がほぼ無いことが影響した。安倍川で瀬切れが観測されたのは同年2月以来。
同事務所の渇水対策本部では河川監視を強化する。同事務所によると、瀬切れは13日午前、河口から約2.8キロ上流の静岡大橋付近=同区=で確認された。16日現在は橋の上流から下流に至る2.4キロの範囲に拡大。海岸付近でも堆積した土砂などで川の流れが切れる河口閉塞(へいそく)が起きている。
国交省が安倍川上流の戸持観測所=同市葵区=に設けた雨量計によると、同年10〜12月の降雨量は平均の約3〜7割で、今月は15日までに計15ミリだった。同事務所は「瀬切れがさらに広がる可能性もある。現在は河川の伏流水により水利用などの影響はないが、注意深く見守りたい」と警戒する。
静岡地方気象台によると、今冬の県内は降水をもたらす南岸低気圧日本海低気圧の影響が小さく、移動性低気圧に覆われる日が多いため、今後も雨が少ない見通しという。(静岡新聞、2019/01/17)

 

川に水がなくなることを「瀬切れ」と呼ぶことを、この時に初めて知りました。

静岡県交通基盤部河川砂防局の河川用語集では、こう定義されていました。

河川の流量が少ない渇水時に、水が河床の砂礫内を流れてしまい、表面に水が流れていない状態。(魚の移動は不可能)

 

最初に知ったのはテレビのニュースで、「安倍川の水が無くなった!異常気象だ!」というニュアンスで放送されていたのですが、以前、ブラタモリで東北の河川でやはり水がなくなる現象を放送していて「表面には水が流れないことがあるが、川の下には伏流水がある」という知識があったので動揺せずにすみました。

 

あるいは30年ぐらい前の私なら、「きっとダムのせい」と原因を単純化したに違いないのですが、今なら少し検索すれば安倍川には本流・支流にひとつもダムがない珍しい川という知識も得られます。

 

検索すると、2017年にも安倍川の瀬切れのニュースがありました。

素人には異常気象なのか、それとも季節や天候のゆらぎのようなものなのかはわかりませんが、雨が多ければ洪水になり、使う量が増えたり雨が少なければ渇水になるので、その調整は本当に大変そうだと感じました。

 

「すわ異常気象だ」と動揺するよりはむしろ、こういうニュースを読むと気象や河川などが正確に定点観測されていることの方が驚きで、どのような方達がどのような方法で観察し続けていらっしゃるのだろうと気になります。

 

もう少し検索していたら、「瀬切れが及ぼす河川環境への影響(中間報告)」という四国地方整備局の資料が公開されていました。

重信川は典型的な扇状地河川であり、瀬切れが頻繁に発生している。近年、特に砥部川下流では瀬切れ日数が増えており、水域に生息する生物の生息環境の悪化が懸念されている。そこで瀬切れが水域内の生物にどのような影響を与えているかを把握するため定量的な調査を行った。

 

ヒトだけでなくそこに住む生物全体への影響まで調べている方々もいらっしゃるのですね。

 

 

あっという間に通り過ぎた安倍川は、まだ瀬切れの状態が続いていました。

でも、あらかじめいろいろと検索して得た情報のおかげで、私には不安な風景ではなく、ちょっと希望の光が感じられる風景でした。

地道に観察したり、整備してくださる方々がそこに見えるような。

 

 

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