散歩をする 118 枯木灘

1泊2日の帰路は、白浜から夕方に出発する特急くろしおに乗って新大阪経由でのチケットを取っていました。

勝浦から白浜までは各駅停車を利用し、次の列車か来るまでの1時間半、どこかで途中下車しようと地図をあれこれと眺めました。

 

白浜といえば、パンダです。少し前にNHKの「サラメシ」で、パンダの赤ちゃんの人気にそのお父さんパンダが拗ねているらしいという話がありました。まあ、動物の感情を擬人化はできないのですが、ちょっと切なくなり、永明に会いに行くのもいいかなと計画の段階では候補に入れました。

ただ、アドベンチャーワールドに行くとなると、おそらく駆け足でパンダを見ることになりそうです。

やはり、今回は、ひたすら川と海をみようと思い直しました。

 

周参見とか見老津といった珍しい名前の駅もいいなと思っているうちに、江住を見つけました。

駅からほど近い小さな半島に、エビとカニの水族館があるようです。周参見町が造った小さな水族館だそうで、そのそばに道の駅もあります。

ちょうどお昼頃に通過する予定だったので、そこに決めました。

 

Wikipediaの「一日平均乗車人員」を見ると2017年は15人になっているように、その時に降りたのは地元の女性2人と私だけでした。

駅舎は小高いところにあって、目の前の小さな湾が一望できます。まずその風景に圧倒されて、しばらくホームのベンチに腰掛けて眺めていました。

 

駅から10分ほど歩くと、水族館がありました。

列車に乗る人の少なさとは別世界で、道の駅には平日なのに家族連れの車がたくさん停まっていました。

Wikipediaの説明を読むと、1997年に見老津駅に地元漁師の協力を得て海洋生物の水槽を設置したことが始まりで、20年の間存続の危機を乗り越えて今の場所に移ったようです。

途切れることなく入場者があり、けっこう皆さん真剣に見ていました。

いろいろな生物を観察する機会が日常生活の一部になったのもこうした施設のおかげだと思いながら、大きなものから米粒ほどの小さな種まで圧倒されながら水槽に顔をつけて眺めました。

 

 

同じ敷地内にある道の駅のレストランは、海を見ながら食事ができます。

少し遅い昼食をとる人がまばらにいただけだったので、特等席を確保しました。

水平線が丸く見え、紀伊水道からの船舶でしょうか、ひっきりなしに通過しているのが遠く見えます。

海岸に近いところでは、小さな船に漁師さん2人が乗って、何かを採っているのが見えました。

 

道の駅のそばに、もう一つおしゃれな建物がありました。

高齢者の福祉施設のようでした。この風景を見ながら生活できるなんてと羨ましく思いましたが、介護老人保健施設とサービス付き高齢者住宅のようです。終身ではなさそうなので、終の住処というわけにはいかなさそうです。

それでも、こうして海が見える場所で生活できるのはうらやましいですね。ときどきエビとカニを眺め、道の駅でビールを飲んで、海岸を散歩して・・・と近い将来を妄想したのでした。

 

目の前の青い穏やかな海が、枯木灘海岸と繋がったのは帰宅してからのこと。

和歌山県南西部、太平洋に面した海岸。西牟婁(にしむろ)郡白浜町瀬戸崎から南東の串本(くしもと)町に至る約40キロメートルの海岸は「荒(すさ)ぶ海」として知られ、地元では寄る港のない海岸を枯木といったという。1968年から熊野枯木灘海岸県立自然公園、2015年吉野熊野国立公園編入)。海岸段丘が海に迫る岩石海岸の景勝に加え、江須(えす)崎、稲積(いなづみ)島の暖地性植物群落は国指定天然記念物。(コトバンク日本大百科全書(ニッポニカ)より) 

 

自然は手強いですね。

ここで生まれ育った方にとっては、あれ荒む海の風景もまた人生の一部だったことでしょう。私には、その風景に耐えらるかどうか。

 

さて、列車が来るまで、またホームに座って穏やかな青い海を眺めました。

列車が来て、旅も終わりに近づきました。

白浜が近づくにつれて、想像していた地形とは違っていたのにまた驚きです。

平地の白い砂浜の海岸線が続くようなイメージでしたが、空港やアドベンチャーワールドがある付近が高台になっていました。航空写真で想像していたよりは、高い場所でした。

だから、白浜駅が海岸線の近くではないところにあるのですね。

 

夕闇の迫る中、和歌山県西部の風景を眺めながら旅は終わりました。

 

 

日本はひろいなと改めて思った2日間でした。

 

 

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